EV化は自動車業界の地図を塗り替えそうだ。EV専門ジャーリストの高橋優氏は「2040年時点でトヨタの販売台数は400万台、対してテスラの販売台数は800万台となり世界のトップメーカーになる可能性が高いでしょう」という――。

※本稿は、高橋優『EVショック ガラパゴス化する自動車王国ニッポン』(小学館新書)の一部を再編集したものです。

テキサス州ヒューストンのダウンタウンに位置する競技場・トヨタセンター
写真=iStock.com/Joe Hendrickson
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トヨタの電動化戦略は、本当にスゴいのか

2021年末、日本の自動車業界に大きな衝撃を与えるニュースが流れました。あの世界最大の自動車メーカーであるトヨタが、ついにEVに本腰を入れるということを発表したのです。

トヨタは、世界初の量産ハイブリッド車であるプリウスを皮切りに、ハイブリッドというカテゴリーで圧倒的な地位を確立し、全方位戦略と自称して、ガソリン車、ハイブリッド車、EV、プラグインハイブリッド車、そして水素燃料電池車まで、あらゆるパワートレインの開発と商品展開を並行する戦略を採用してきましたが、その中で残念ながらEVの商品展開には最も消極的でした。一部の機関投資家やメディアからも、トヨタは全方位戦略と自称しながらも、EVに対しては消極的だと批判されていたのです。

トヨタはそのような世の中の懸念を払拭するためにも、EVに特化した投資概要を発表する必要性に迫られ、2021年末に豊田章男社長自らが登壇して、2030年までのEV戦略を発表したのです。

2035年までにレクサスの完全EV化完了へ

それでは、トヨタがどのようなEV戦略を発表したのか、具体的に見ていきましょう。

・2030年までにトヨタ・レクサス合計で30車種のEVを発売
・2030年までにトヨタ・レクサス合計で350万台のEVを発売
・2035年までにレクサスの完全EV化完了
・2030年までに電動化に対して最大8兆円を投資
・2030年までに年産280GWh(ギガワットアワー)ものバッテリーを確保

以上が、トヨタの「バッテリーEV戦略に関する説明会」において発表された特筆すべきポイントです。

このように見てみると、やれEV30車種であったり、やれ8兆円投資など、極めてインパクトの強い数値が目に飛び込んでくるため、ついに巨人トヨタが本格的にEV市場に参入してきた、と感じる方が多いかもしれません。

しかしながら、このトヨタが発表してきたEV戦略に関する数値をしっかりと分析し、競合メーカー勢と比較しなければ、本当の全容をつかむことはできません。ひとつずつ詳細にその内容を見ていきましょう。