高級車ブランドでもレクサスの出遅れ感が否めない

すでにEVに舵を切っている世界の高級ブランド第3に、「2035年までにレクサスの完全EV化完了」という点ですが、確かに今から10年ちょっとでレクサスから発売される車両が全てEVになってしまうとイメージすれば、これは大きな変化です。しかし、このレクサスが属する世界の高級自動車ブランドを見渡してみれば、各ブランドはそろってEVに舵を切る方針をすでに表明済みなのです。

例えばドイツ御三家であるメルセデス・ベンツは、2030年までにはグローバルで発売する全ての乗用車をEVのみにする用意があることを表明し、そのためのバッテリー生産量を確保する投資概要を発表済みです。

アウディも、親会社のフォルクスワーゲングループの意向に沿う形で、2026年以降に発売される新型車は全てEVのみ。2033年以降については、原則として内燃機関車の販売を完全終了する方針を表明しています。

またBMWは、全てEV化するという流れには懐疑的で水素を活用したモビリティの開発を進めたりしていますが、やはり将来中心に展開していくのはEVであり、2023年中にも全てのセグメントに最低1車種以上のEVをラインナップし、2030年までにはグローバル販売の50%以上をEVに置き換える方針を表明しています。傘下のロールスロイスについても2030年までにEVブランドに移行する方針を表明して初のEVとなるSPECTRE(スペクター)を発表し、2023年中にも納車をスタートする予定です。

世界の高級車ブランドは2030年までにEV化を完了

韓国の自動車メーカー、ヒョンデの高級車ブランドであるジェネシスは、2025年以降に発売される新型モデルは全てEVか水素燃料電池車の排気ガスを一切排出しないゼロエミッション車両とし、2030年までには既存モデルの内燃機関車の販売を完全に終了することを表明。つまり2030年からジェネシスはEV、もしくは水素燃料電池車の専業ブランドとなる方針を表明しています。

EVシフトが加速する中、特にそのペースが早い高級車ブランドは、2030年ごろをひとつの目安として、そろってEVへの転換を計画しているのです。EVはそもそもの車両パッケージとしてエンジンがないため振動がなく、静粛性に優れています。バッテリーが車両底面に搭載されていることによって車体の重心が非常に低く、より安定し、かつスポーティな走行を楽しめます。まさに高級車メーカーの目指す理想の車をEVによって体現することができるのです。

こうしてみると、2035年までにレクサスがEVしか発売しなくなるという方針は、世界の高級ブランドのEV戦略と比較してみると、取り立てて特筆すべきEV化のタイムラインではありません。むしろ高級ブランドの完全EV化はもはや避けては通れないので、トヨタグループとしてはその世界の潮流に追随する形で、EV一辺倒の戦略を遅ればせながら採用してきたというわけなのです。