フォルクスワーゲンの電動化戦略はトヨタを上回る

まず第1に「2030年までにトヨタ・レクサス合計で30車種のEVを発売」という点ですが、例えば日産は、2030年までに15車種ものEVを発売することをすでに表明しています。トヨタと日産は、グローバル販売台数でおおよそ倍程度の差があることから、トヨタの販売車種が日産の倍であるのは当然です。とすると、実はトヨタの30車種のEV発売というのは、日産の電動化戦略と同じ規模感である、ということになります。

一方、現在既存メーカーの中で最も電動化にシフトしていると定評のあるドイツのフォルクスワーゲングループの電動化戦略を見てみると、2030年までになんと70車種ものEVをラインナップすることを表明しています。

モスクワ通りで充電する電気自動車、ロシア
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もちろん、車種というカテゴリーがどのような切り口となるのかによって、一概にトヨタの30車種と同列に比較するのは適当ではないものの、少なくとも販売台数ベースで同等のトヨタよりも明らかに展開車種が多いのは明白です。つまりトヨタのEV30車種という数値は、世界基準で比較してみると取り立てて多い数値ではないのです。

2030年時点でのEV化率でも見劣り

第2に、「2030年までにトヨタ・レクサス合計で350万台のEVを発売」という点ですが、こちらもEV30車種と全く同様、絶対値としてはインパクトのある台数ではありますが、例えばフォルクスワーゲングループのEV販売台数予測を見てみると、2030年までに全乗用車の販売台数のうち、50%以上をEVにリプレイスするとアナウンスしています。フォルクスワーゲングループの乗用車販売台数は概ね1000万台程度ですから、フォルクスワーゲングループが想定している2030年時点でのEV販売台数は500万台程度ということになります。

するとトヨタの350万台というEV販売台数は、確かに絶対数として見れば多いように感じるものの、ライバルメーカーと比較すると、むしろその販売台数は少ないのです。

2030年時点におけるEV比率を比較してみても、トヨタは30%程度。対するフォルクスワーゲングループは50%と見劣りします。EV販売台数350万台という数字だけを見て、トヨタのEV戦略が極めてアグレッシブだとは言えないのです。