※本稿は、高橋優『EVショック ガラパゴス化する自動車王国ニッポン』(小学館新書)の一部を再編集したものです。
2022年9月にドイツで最も売れた「モデルY」
2020年3月、テスラはモデル3に続く新型EVを発売しました。ミッドサイズSUVセグメントのモデルYです。SUVは現在、世界的に需要が増加しているため、セダンタイプのモデル3よりもさらに売れることは容易に予想がつきます。
この世界的に需要の高いモデルYを生産するため、テスラはアメリカ第2の工場としてテキサスに「ギガファクトリー5」を建設し、2022年の前半から稼働させました。またドイツ・ベルリンにもヨーロッパ大陸初の「ギガファクトリー4」を建設し、2022年前半から稼働させています。現在テスラはグローバルに4つの車両生産工場を稼働させており、その全てでモデルYを生産する体制を構築しています。
2022年後半時点で、モデルYの生産台数はベルリンのギガファクトリー4で週産2000台を突破。販売台数では2022年9月に日本に次ぐ自動車大国であるドイツ市場のみで9846台という販売台数を記録し、ドイツ国内で最も売れた自動車に君臨したのです。
最も売れたEVというだけではなく、内燃機関車も全て含めたランキングでも、長年ベストセラー車に君臨し続けているフォルクスワーゲンのゴルフを超える販売台数を達成しました。
EV大国の中国市場でも圧倒的な販売台数を達成
もちろん単月のみの販売台数で一喜一憂するべきではないとは思いますが、ドイツで最も売れた車が内燃機関車ではなくEVであった、しかもそのEVはドイツメーカー製ではなくアメリカ・テスラ製であったという事実は、自動車大国ドイツでも強力なライバルとして一目おく存在になったと言っても過言ではないでしょう。
モデルYはヨーロッパ市場だけでなく中国市場でも圧倒的な販売台数を達成しています。ドイツと同じく2022年9月、中国国内の人気車種ランキングにおいてモデルYは5万台近い販売台数を記録して首位に君臨しました。
特筆すべきは先ほどのドイツ市場と同様、EVというカテゴリーだけではなく、内燃機関車も含めた全てのカテゴリーでトップに立ったという点です。しかもトップ10の顔ぶれを見てみると、トップのモデルYと第6位のモデル3以外は100〜200万円程度から購入できる大衆車です。第3位にランクインしているのが超格安小型EVのHong Guang Mini EVだということを鑑みれば、600万円以上の高級車であるモデルYが異常とも言える販売台数を記録していることがわかります。