世界の銀行資産の半分以上がタックスヘイブンを経由
このタックスヘイブンには、現在、世界各国が頭を痛めている。
企業はちょっと大きくなるとすぐにタックスヘイブンに行ってしまう。
そして本社をタックスヘイブンに置かれたら税金がとれなくなり、税収が不足してしまうのだ。またちょっとお金を貯めた個人は、すぐにタックスヘイブンに資産を隠す。そうなると、母国での相続税などの課税は非常に難しくなる。
このタックスヘイブンで、一番被害を受けているのは、実はアメリカ政府である。
代表的なタックスヘイブンであるケイマン諸島には、1万8857の企業があり、そのうちの半分は、アメリカの関連企業である。ここでアメリカは、年間約1000億ドル(約11兆円)の税収を、失っているという。
もちろん、アメリカだけではなく、世界中の国々がタックスヘイブンの被害を受けている。
現在、世界の銀行資産の半分以上、多国籍企業の海外投資の3分の1が、タックスヘイブンを経由していると言われている。
国際通貨基金IMFは、2010年の発表で、南太平洋などの島嶼部のタックスヘイブンだけで、18兆ドル(約1800兆円)の資金が集められているとしている。
18兆ドルというのは、世界総生産の約3分の1に当たる巨額のものである。
しかも、これは「過小評価と思われる」と付記されている。
国際非政府組織(NGO)の「税公正ネットワーク」は2010年末時点で、21兆~32兆ドル(約2270兆~約3450兆円)の金融資産が、タックスヘイブンに保有されていると分析している。
野放しの背景「黒幕にイギリス」
タックスヘイブンは、世界中に害を与えているのに、なぜ先進諸国はこれを野放しにしているのか?
もちろん、各国はこれに手をこまねいているわけではない。
OECDなどが中心となって、タックスヘイブンに規制を設けようという試みは、今まで何度も行われてきた。
しかし、タックスヘイブン側がなかなかそれに応じないのである。
タックスヘイブンの主なところに、ケイマン諸島、ヴァージン諸島、香港、シンガポール、ルクセンブルク、パナマなどがある。これらの国名を見ればわかるように、お世辞にも大国とは言えないところばかりである。
なのに、なぜ先進諸国は、タックスヘイブンに強い圧力を加えることができないのか?
タックスヘイブンの中心には、大英帝国の存在があるからである。
つまりは、タックスヘイブンのバックには、イギリスがいるのである。
タックスヘイブンというと、「南太平洋などの小国が、自国に企業を誘致するために無税にしている」というイメージがある。
しかし、タックスヘイブンを最初につくったのは、イギリスであり、現在もタックスヘイブンの多くを実質的に支配しているのは、イギリスなのだ。
一般の方には、「何がなんだかわからない」と思われるだろう。
また、「この著者は、空想的陰謀論者なのか」と思った人もいるかもしれない。
しかし、イギリスがタックスヘイブンをつくったことや、現在もタックスヘイブンに大きな影響を持っていることは、金融史にも記されていることであり、誰もがすぐに確認がとれる歴然たる事実なのである。
それにしても、なぜイギリスはタックスヘイブンをつくったのか?
その経緯を説明したい。