規制の緩さが金融危機の引き金に
しかし、このロンドンの規制の緩さは、しばしば世界的な問題をもたらしてきた。
たとえば、かのリーマン・ショックも、ロンドンが大きく関係しているのだ。
リーマン・ブラザーズが破綻した大きな要因となった「レポ105」という取引は、実はイギリスの子会社で行われたものなのである。
「レポ105」というのは、簡単に言えば決算期直前などに、手持ちの債権などを「あとで買い戻す」という条件のもとで、一時的に現金に換えるという取引である。
決算期直前にこの取引をすれば、決算書上は、現金をたくさん持っていることになる。つまり健全な経理内容のように見えるのだ。
リーマン・ブラザーズは、この「レポ105」を大掛かりに行うことによって、アメリカの監督庁の目をごまかしていた。
この「レポ105」は、リーマン・ブラザーズのイギリスの子会社で行われていたのだ。
イギリスは、この手の取引についても、法律が緩く、監査法人は簡単にゴーサインを出す。
アメリカの監査法人であれば間違いなく、制止するはずなのに、である。
リーマン・ブラザーズとしても、「アメリカでこれを行うことはできないが、イギリスでならできる」ということを踏んでいたのだろう。
またリーマン・ブラザーズと同様の戦犯である「AIG」の経営危機もロンドンが大きく関係している。
AIGは、多額のサブプライム・ローンを抱えていたことで経営危機に陥ったのだが、このサブプライム・ローンは、AIGのロンドン・オフィスが中心となって推し進められていたのである。
もちろんリーマン・ショックの要因はそれだけではないが、イギリスの金融規制の緩さが大きな要因の1つであることは間違いない。