脱税や租税回避行為の温床であるタックスヘイブン。先進国の多くは税収不足で被害を受けているが、なぜ野放しになっているのか。『お金で読み解く世界のニュース』(PHP新書)を出した元国税調査官の大村大次郎さんは「タックスヘイブンの黒幕はイギリスだ。しかし、最大の被害を受けているアメリカはこれを取り締まることができず、自身がタックスヘイブンを創設、運営するようになった」という――。
※本稿は、大村大次郎『お金で読み解く世界のニュース』(PHP新書)の一部を再編集したものです。
脱税、犯罪マネーの隠し場所…タックスヘイブンのもう1つの性質
昨今の世界経済の大きな問題として「タックスヘイブン」というものがある。
タックスヘイブンとは、「租税回避地」のことであり、税金のかからない地域のことである。タックスヘイブンに住居地を置けば、個人の税金はほとんどかからない。
また各国を股にかけている多国籍企業が、本拠地をここに置いておけば、法人税の節税もできる。タックスヘイブンに本社を置いて、各国には子会社を置く。そして、各国の利益は、タックスヘイブンの本社に集中するようにしておくのだ。
そうすればその企業グループ全体では、税金を非常に安くすることができる。だから、本社をタックスヘイブンに置いている多国籍企業も多い。
特にヘッジファンドと呼ばれる投資企業の多くはタックスヘイブンに本社を置いている。
そして、タックスヘイブンには、もう1つの性質がある。
それは「守秘性」である。
タックスヘイブンは、自国内に開設された預金口座、法人などの情報を、なかなか他国に開示しないのである。たとえ犯罪に関係する預金口座、企業などであっても、よほどのことがない限り、部外者には漏らさない。
そのため、世界中から、脱税のための資産隠しをはじめ、麻薬などの犯罪に関係する金、汚職など不正な方法で蓄えた資産が集まってくるのである。
つまり、タックスヘイブンは、脱税をほう助するとともに、犯罪マネーの隠し場所にもなっているのだ。