「何でこんなことしているんだろう」という気分になる
「C駅まで……行きたいんだ……」
目的地の駅名を答えてくれた。この駅から他社線に乗り換えて3駅ほど行ったところだ。それなら他社線の駅員に引き継ごう。
「立ってください、C駅に行く電車はこっちですよ」
と声をかけるも、自力では立てないようだ。手を貸して立ち上がるのを手伝いたいが、彼の服は吐瀉物で汚れている。でもここはもう仕方ない。
ポケットに入っていた白手袋(*)を気休めに手に装着し、手を貸す。一人で歩くことも難しいようで、手と肩を貸しながら改札へ向かう。何とか他社線に乗り換える改札にたどり着いた。他社線の駅員には大変申し訳ないものの、今の状況と目的地がC駅であることを引き継ぐ。これにて何とか一件落着となった。
電車に乗っていて体調が悪くなるのは多少仕方ない面もあると思うが、酔客に対応していると「本当に何でこんなことしているんだろう」という気分になった。酒の飲みすぎには十分気を付けてほしい。
*筆者註:白手袋……白手袋はホーム上での列車看視や車いす対応のために常にポケットに入れている。
線路に物を落としても、簡単には拾えない
「線路に物を落としてしまったのですが」
こう言われると、だいぶ待たせることになるので少し申し訳なく感じる。
電車とホームの間には隙間がある。少し油断すると簡単に物を落としてしまう。特に携帯電話や靴、最近ではワイヤレスイヤホンを落とす方が多い。
電車が来ていないタイミングでホームから線路に降りて拾えばいいと思うかもしれないが、そう簡単にはいかない。電車は時刻表どおりに来るとは限らず、遅れて来る場合もある。
また、時刻表に載っていない回送列車が突然来る場合もある。電車が近付いてくる音で気付きそうなものだが、他のことに集中していると気付かないものである。
私も一度経験がある。ある日、駅のホームを清掃していた。点字ブロックギリギリの所を掃除していたら、電車が警笛を鳴らして猛スピードで通過していった。このタイミングでよろけて線路側に転倒するなんてことがあったら大事故である。
もちろん電車が通過しますという自動放送も入っていたし、音も聞こえていたはずなのに、警笛を鳴らされるまで気が付かなかった。
このように、何かに集中してしまうと電車が近付いてきても気付けないことがある。単独で線路内に降りて拾得するなんてもってのほかだ。
実際に落とし物を拾得する様子を見たことがある人ならご存じかもしれないが、線路内の落とし物は基本的にマジックハンドを用いて拾得する。これにより、危険な線路上に降りず拾得することができる。それでも、一人で作業していると気付かずに電車が接近して、マジックハンドと電車が接触するなど事故につながる可能性がある。