「管理監督者」であると認めさせるハードル
まず、①について、管理監督者とは、「労働者の労働管理について、経営者と一体の立場にある社員」を指します。管理監督者にあたる社員に対しては、会社は残業代を支払う必要がありません(労働基準法第41条2号)。
他の社員の労働時間などを管理監督するような社員であれば、自分の労働時間は自分の裁量で律することができるはずです。そして、その地位に応じた高い待遇を受けているのだから、労働時間の規制をする必要がありません。さらに、そのような社員は、職務や責任が重大であることから、労働時間は自ずと長くなるはずなので、労働時間の規制になじみません。以上が、管理監督者にあたる社員に、残業代を支払わなくてよいとされている理由といわれています。
しかし、例えば「部長」など、管理職の肩書きが与えられている社員であれば管理監督者にあたる、といった単純な話ではありません。社員が管理監督者にあたるかどうかについては、
ⅰ: 経営に関する決定に参加して、他の社員の労務管理について指導監督する権限が認められているか
ⅱ: 出退勤の時間などを自分の裁量で決められるかどうか
ⅲ:高い地位と、それにふさわしい給料を得ているか
など、様々な観点から判断されます。裁判所に、管理監督者であると認めてもらうハードルは意外と高く、この主張が通るケースはあまりないというのが実情です。
「社員のサボり」をどう客観的に証明するか
②については、例えば、「残業代を請求してきた社員は、勤務時間中にずっとSNSを見ており、仕事をしていなかった」といったものです。
このような主張をするのであれば、最低限、パソコンのログの解析結果など、客観的な証拠を集める必要があります。さらに、ログを提出できたとしても、社員から、「仕事の合間に会社のパソコンでSNSを開いたことはあるが、そのままその画面をつけっぱなしにしていただけで、仕事はしていた」「サボっていると会社から注意を受けたことは一度もない」などと主張されると、それに対する反証も難しいです。
勤務時間中に、Twitterで1日2、3回程度ツイートしていたとしても、それだけで残業代を払わなくていい、と判断されることはまずないでしょう。1日中ずっとツイートしていたとか、勤務時間中に何度も株取引をしていた、といったレベルでないと、残業代を支払わなくていい理由とはされないと考えてください。
このように、残業代を請求された場合に、会社が反論をして、支払う金額をゼロにするということは、決して容易ではないのです。