弁護士業界でも注目されている残業代請求

「残業をしたらその分の残業代を支払うのは当然のこと」です。時代は変わっています。

甘い考えのまま、残業代支払の問題を放置していた場合、会社が痛い目にあってしまう可能性があります。そして、その可能性は、以前よりも高まっているように思います。

その大きな理由として、残業代の消滅時効期間が延長されたことが挙げられます。

残業代をさかのぼって請求できる「消滅時効」という期間はかつて2年でしたが、働き方改革に伴う労働基準法の改正で、現在は移行期間として当面の間3年に延長されており、今後5年になる可能性があります。

このような流れを受けてか、未払残業代の請求は、弁護士業界でも注目されています。借金の過払金請求を呼びかける法律事務所のCMをよく見聞きしますが、未払残業代請求も、請求することに法律上は、正当な理由があり、相手も個人ではなく会社で、回収がしやすいという点では、過払金請求と共通の性質を持っています。よって、昨今の時効期間延長の流れを受けて、未払残業代の請求も、弁護士業界で過払金請求のようなトレンドになっていく可能性があります。

裁判所の看板
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それこそ、毎月ほとんど残業代をもらえずに、不満を抱えながら長時間労働を強いられている労働者が、そんなCMを見たら「今の会社は辞めて残業代を請求しよう」と思うのも無理はないでしょう。

本書は、社長に、労働トラブルを未然に防ぐためのポイントをお伝えすることを目的にしています。よって、社長の皆さんには「労働時間」に関して気がかりな点があれば、早急に手を打ってもらいたいと念を押してお伝えしたいところです。

裁判で会社が完全に勝てるケースは少ない

残業代の裁判でも、会社が完全に勝訴できるケースは少ないです。その理由の一つとして、会社側の反論が通りにくいということが挙げられます。未払残業代について裁判になった場合、会社は、

①その社員が管理監督者にあたるという反論
②残業になった理由は、通常の勤務時間中に社員がサボっていたからだという反論

をすることが多いです。しかし、これらの理由は裁判所にはなかなか認めてもらえません。