藤井聡太七冠の活躍で将棋界が盛り上がっている。そもそも将棋とはどんなゲームなのか。東京都立大で特別講義「将棋で学ぶ法的思考・文書作成」を開講している木村草太教授は「一歩しか進めない駒を活躍させるために繊細な工夫を積み重ねなければいけない一方、『持ち駒』ルールのおかげで驚くほど派手な手が登場する。そんな繊細さと派手さの両方を楽しめるゲームだ」という――。

※本稿は、木村草太『将棋で学ぶ法的思考』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

将棋
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将棋は「指す」、囲碁は「打つ」

「将棋」には、中将棋、大将棋、中国や朝鮮半島の将棋、ヨーロッパで発達したチェスなど、いろいろな種類(将棋類)があります。普通に「将棋」といった場合には、本将棋を指すことが多いでしょう。羽生善治さんが永世七冠を獲得したり、藤井聡太さんが前代未聞の八冠独占を達成したりしたのは、この本将棋です。以下、単に将棋と言った場合には、本将棋を指していると思ってください。

将棋は、ボードゲームの一種で、9×9の81マスの将棋盤に、合計40枚の駒を置いて遊びます。将棋やチェスをプレイすることを「指す」と言います。

将棋やチェスの駒は、兵士に見立てられています。司令官になって、兵士に動く場所を指し示すので、「指す」というのでしょう。これに対し、囲碁の場合は、盤の外から碁石を打ち付けるので、「打つ」というわけです。

自分の王様を守って相手の王様を捕まえる

将棋の目標は、「相手の王様を捕まえること」であり、相手の王様を捕まえた状態を「詰み」と言います。先手と後手が、それぞれ一回ずつ駒を動かし、最初に相手の王様を詰ませた側が勝ちです。

将棋の駒にはそれぞれに特性があり、動ける範囲が決まっています。相手の駒が動ける場所に自分の駒がいると、その駒は相手に捕まってしまいます。駒が動ける範囲のことを「駒が効いている」と言います。

自分の王様がいる場所に相手の駒が効いていて、その効きをさえぎることができず、また、その駒や他の駒が効いていて、どこにも逃げ道がない状態が「詰み」です。

王様となる駒は、「玉将(ぎょく)」または「王将(王)」と言います。玉/王は、通常、周りをたくさんの護衛(守り駒)でとり囲んで守ります。相手側は、その護衛を捕まえたりおびき出したりして引きはがし、相手の玉/王を自分の駒の効きにとらえるように攻めていきます。