TikTokに身を任せれば新しいサービスに出合える
過去の自分にとっては関心の無いコンテンツでも、自分と同じようなタイプのユーザーのデータに基づいてTikTokが予測し、「これから好きになるかもしれない」動画を見せてくれる。アプリを開いたらTikTokに身を任せているだけで、自分がまだ気づいていない新しい面白さを提案して、無限に楽しませてくれるSNSサービスとなっている。絶えず新しいフックとなるおすすめ動画を提供し続けることで、ユーザーを離さない高い中毒性を導いている。
また、AIによるレコメンドは、まだフォロワー数が少なく影響力の小さいアカウントの投稿であっても、良質なコンテンツかどうかを見極めて、幅広いユーザーに拡散してくれる。それによって、ショート動画を投稿するユーザーにとって、「いつでも、誰でも、どんなジャンルでも、大ヒットできるチャンスがある」というメリットを生み出している。これは他のSNSサービスとの大きな違いであり、高く支持されている点でもある。
他社の真似からはじまり、他社を突き放す存在に
TikTokを運営するのは、2012年3月に北京のマンションの一室で創業され、それからわずか10年で、世界で最も勢いのあるSNSサービスを展開するまでに飛躍した中国のメガベンチャー企業のバイトダンスだ。「情報(バイト)を社会で拡散(ダンス)させる」を名とするメガベンチャーは、まず中国国内でニュースアプリ「今日頭条(ジンリゥ・トウティアオ)」をヒットさせたが、そこでの強みこそが、ユーザーの興味のあるコンテンツを最適提供するAIレコメンドだった。「知りたいニュースをどんどん出してくれる」と評判を呼び、朝起きたらまずこのアプリを開くのが習慣化するほどに普及した。この同じ強みを発揮したのが、「音を振動させる」という名から音符が揺れて重なったロゴを採用した、中国国内版ショート動画SNS「抖音(ドウイン)」で、TikTokはその海外版である。
TikTokはもともと他社サービス「Musical.ly」の真似からはじめられたものだが、強力なレコメンド機能などを強みに急成長を果たし、本家を買収するまでに飛躍を遂げた。近年では、TikTokの大ヒットに対抗して、FacebookやInstagram、YouTubeなどのライバルがショート動画機能をサービスに取り入れ、激しい競争が繰り広げられている。TikTokは、ライバルを突き放すため、レコメンド機能のさらなる進化、他の生活サービスと連携する新機能、魅力的な投稿をしてくれるクリエイターへの特別報酬を通じたコンテンツ強化などの取り組みを重ね、ユーザーの心を掴んで離さないサービスの提供・更新を続けている。