なぜ金持ちは節税対策がうまいのか?

こうした金持ちの節税対策を影で支えているのが信託銀行だ。庶民にはなじみの薄い信託銀行だが、富裕層にはしっかりと食い込んでいる。「預金口座を通じてATMなどで資金を出し入れするだけの個人取引はコストばかりかかってもうからない。儲かるのはいろいろな手数料収益に結びつく富裕層取引だ」(メガバンク幹部)とされる。その最たるものが不動産取引に関わる収益だ。

実は不動産業務は銀行界では信託銀行が唯一、兼営法上の併営業務として認可されている。普通銀行等は手掛けることができない。例外的に「りそな銀行」が手掛けているだけだ。信託銀行が富裕層取引をほぼ独占しているのはこのためだ。

「不動産業務をめぐる垣根を撤廃してはどうかという議論は長年くすぶっているのですが、不動産業には多数の専業者がおり、主務官庁である国土交通省との調整が不可欠。無理押しすれば政治問題化しかねない。なにより既得権益を失う信託銀行は猛反対だ。結局、普通銀行の不動産業への進出は依然として解禁されないままでいる」(地銀幹部)とされる。

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「まず“パンツまで脱いでください”と言っています」

日本の資産家は、ほぼイコール「土地持ち」と見ていい。そこに食い込んでいる信託銀行は、実は日本の金融機関で最も広範な業務領域を持つ「隠れたエクセレントカンパニー」だ。信託銀行の業務範囲は、預貸を中心とした銀行業務ほか、資産運用、不動産業務、年金業務、遺言信託、証券代行業務、はては株式の取り次ぎまで実に幅広い。そのルーツは英国にある。

信託を英語表示すれば“トラスト”。「十字軍に参加する騎士が、遠征中に自身の資産の管理を教会に委託したのが“トラスト”の始まりだ。日本では大正時代から導入され、戦後、商業信託として花開いた」(大手信託銀行幹部)とされる。騎士が自身の全財産の管理を教会に委託したように、信託銀行は個人の資産を受託する。全財産を管理するためにはいろいろな機能をもっていなければならない。このため、信託銀行は、銀行業務のほか、財務管理、資産運用に関する多様な機能を有している。

「俗な言い方になりますが、お客さまにはまず“パンツまで脱いでください”と言っています。夫婦間で秘密にしているような資産も含めすべての財産を教えてもらうことからスタートします。その目録を踏まえて、それぞれのニーズにあったオーダーメイドの商品・サービスを考案します。不動産や株式などへの資産運用はその筆頭です」(大手信託銀行幹部)とされる。