横行する「タワマン節税」の仕組みとは
相続人は路線価を「時価」として相続税評価額を算定したが、その時価が実際の取引価格と比べて「著しく不適当」と認定されたわけだ。国税の財産評価基準通達の総則6項では「著しく不適当と認められる財産の価額は国税庁長官の指示を受けて評価する」と規定されている。「伝家の宝刀といわれてきた例外規定で、これまで適用されるケースはほぼ皆無だった」(同)という。今回、この規定が適用され、最高裁がお墨付きを与えた意味は大きい。
背景にあるのは、不動産にまつわる過度な節税の横行だ。2010年代前半にかけて人気を集めた高層マンション節税もそのひとつだった。相続資産のうち金融資産を高層マンションに組み替えることで相続税評価を下げる仕組みだった。大手不動産会社社員はこう説明する。
「マンションでは土地と建物を分けて相続税評価額を算定するが、土地は敷地全体を戸数で分ける共有持ち分となるため戸建てに比べ極めて小さく見積もられる一方、建物の評価は固定資産税評価の基準となる路線価が適用される。このメリットを最大限に生かせるのが高層マンションの高層階だ」
面積は同じでも、市場価格は高層階ほど高い
「専有面積が同じであれば低層階でも高層階でも評価額は変わらない反面、実際の市場価格は高層階ほど高い。この評価額の差が節税効果を生む仕掛けだった」
しかし、国税庁は15年に、高層マンションを使った、いき過ぎた節税が横行しているとして厳しくチェックするよう全国の国税局に指示を出し、「租税負担の公平性から看過しがたい場合は(例外規定の)6項の運用を行いたい」とコメントを公表した。問われているのは、まさに「租税負担の公平性」と言っていい。
与党税制調査会の大綱を受け、国税庁は2023年に有識者会議を設置して価格の乖離の現状を分析し、評価額を適正な水準に引き上げるルールの見直しに着手する意向だ。「23年度内に国税庁の関連通達を改正する可能性が高い」(自民党関係者)という。節税の穴がまたひとつ埋められることになる。