企業は「建前だけで行動していない」

「自分が主導して、環境問題の活動をしようと大学に入ったら、ガチ勢は本当にすごかった。企業から広告を集めるためにフリーペーパーをつくり、そこには大企業が協賛していた。1000人単位で学生を集めてイベントをやっていたりして、会社のようでした。僕がやっていたような、役所に意見書を出すとかのレベルではなかったんです。もちろん、僕もその活動に参加し、イベントでパンフレットを配ったり、友達に啓蒙けいもう活動をしたりしていました」

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環境にまつわるイベントは多くある。そこは出展料も高く、1日に動くお金は億単位のビジネスモデルとして成立している。

「活動をしていて思ったのは、結局、『建前だけで行動していない』ということでした。企業の担当者は『みなさんの活動を応援しています』と言っても、それは会社的に『こういう団体を応援して、環境に配慮する未来を考えています』というPR要素にしたいだけ。活動している学生にしても、就職活動のときに切るカードの1枚程度にしか考えていない」

空調がガンガンに効いた部屋で夜中までかけてつくったフリーペーパーは大量に刷られ、やがて廃棄される。配布場所となる店の交渉、広告集めに奔走する学生に対して、対価は払われない。

「モチベーション詐欺というか、いろんなものを見てしまったんですよね。みんなペットボトルをガンガン買って、ラベルもキャップも分けずに捨てる人もいましたしね。もちろん、本気で環境のことを考え、行動している人も多くいましたが、焼け石に水なんだとわかった。そこでやる気をなくしてしまったんです」

環境に配慮した生活にはお金がかかる

環境に配慮した生活は不便で金がかかる。たとえば食器用洗剤も大量生産品は100円で購入できるが、配慮されたものは5倍程度する。一事が万事そうなのだ。

「学生には無理なんですよ。それなら、何も使わずに生活するしかない。でもフリーペーパーの活動は続けて、無事に就職できてよかったんですけれどね」

しかし就職した会社はブラックだった。始発から終電まで会社にいて、「なんでできないんだ」と怒号が飛ぶ。しかしもともと体育会系だったので、打たれ強かった。「一番堪えたのは、学生時代のフリーペーパーでつき合いがあった協賛企業のイベントを担当したときのことです。学生時代に出会ったその企業の担当者は『みんなで頑張りましょう』などと言ってくれて、たくさんのアイディアをくれたのです」

学生は“将来のお客さん”でもある。しかし、社会人になれば受発注の関係になる。担当した社員は、浩平さんを下請け扱いし、無理難題を押し付けた。

「てっきり環境に配慮するもんだと思っていた。でも、僕たちの担当者はノベルティを作成するときも『安けりゃいい』の一点張り。僕は学生時代の思い込みから来場者に配布するペットボトルについて『環境に配慮したものを使用』などのリストを作成したんです。それを見せたら露骨に嫌な顔をされました」