エコ意識が高すぎて家族との関係性も悪化

理想と現実の違いを思い知らされる中、入社5年目にして、ついに体が悲鳴をあげた。浩平さんは会社を辞め、実家に戻る。

「熱い思いがあると生きにくいということですよ。それからしばらく実家で療養をしていたのですが、家にいると大量生産されたものがたくさんあって、気になってしまうんです。僕が環境に配慮されたものを買うと、両親から『無職のくせにいいものを買って偉いな。その分、金を入れろ。お前には学費がかかっている』と言われる。所詮は金なんだと思い、1カ月で東京に戻ってきました」

両親にしてみれば、学費も払ってやっと成人したと思った息子が無職の居候となれば、迷惑以外のなにものでもない。父親は帰ってきた浩平さんに対し空港で「飛行機ってな、お前の嫌いな二酸化炭素をたくさん出すらしいぞ」などと、嫌味を言った。

ジェット機の二酸化炭素
写真=iStock.com/Tanaonte
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「環境問題について、子供の頃から口うるさく言っていたので、両親との関係はよくありません。父は会社を経営しており、母も美容サロンを経営していたので、忙しい。僕が小学生の頃、父がお客さん用に注文していたテイクアウト用の寿司を取りに行くというお使いをしたことがあったんです。そこで、僕は家からタッパーを持って行き、そこに入れてもらった。大将は『リサイクルか。えらいね。いい子だね』と褒めてくれましたが、父にはあり得ないくらい怒られました」

もてなし用に注文していた寿司が、プラスチックの簡易桶ではなく、黄ばんだタッパーで運び込まれたら、それは驚くだろう。「大人になればわかるんですけれど、子供の頃はわからなかった。実家にいると、そういう思い出ばかりが浮かんでくる。僕には兄がいるんですが、兄は電力会社に勤務しています。兄は幼い頃から僕のことを嫌っています」

ゴミを出さない生活を心がけてはいるが…

本音と建て前。その着地点を見つけるのも環境問題の課題だ。人間、一度手に入れた便利と美しさ、清潔、快適をなかなか手放せない。

一方、環境問題には「地球の未来のために」という大義名分がある。それをしていないと自分に対して、心のどこかで恥じてしまう気持ちが生まれてしまう。たとえば、エコバッグを忘れて買い物に来てしまったとき、贈り物の包装箱を捨てるとき、使い捨てプラスチックのコップやカトラリーを使っているときなどだ。浩平さんと一緒にいると、「私は地球の未来に悪いことをしている」という罪悪感が生まれる。

「僕には深く付き合う友達も恋人もいないのですが、それはそういうことかもしれません。昔、彼女がいたことがあって、一緒に缶ビールを飲んだんです。そのときに僕が『アルミ缶ってさ、リサイクルしやすいからエコに見えても、加工に大量の電気が必要なんだ。だから実際はエコじゃないんだよね』と言ったことがあったんです。そのときに『もういいよ。そういう話は』と出て行かれてしまいました」

浩平さんは地球に配慮した生活をしている。界面活性剤を使いたくないために、食器も自分の髪も固形せっけんで洗っている。フェアトレード認証を受けた服やバッグを使い、ゴミを極力出さない生活を続けている。

「でもエアコンは使うし、水も使う。いろいろ苦しいんですよ。職場でも大量のゴミを捨てていますしね。それを言うと、また人間関係にひずみが起こるから、黙っていますけれど」