※本稿は、沢木文『沼にはまる人々』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。
1日3食ラーメンを食べ続ける生活
都内の鉄道関連会社に勤務する晋太郎さん(仮名・40歳)は、コロナ禍中にラーメンにはまった。
「会食が禁止になり、外食といえば多くの人が黙食で感染リスクが少ないラーメンだけになっていたんです。ラーメンを毎日食べると、食べずにはいられなくなる。今は1日3食ラーメンを食べていて、身長170センチ、65キロだった体重は、この2年で85キロまで増えました」
その食べ方はすさまじい。朝からラーメンを提供している店に行き、朝食。昼は勤務先の近所にある“二郎系”と呼ばれる店にローテーションで行く。客先や現場に行くときは、その付近のラーメン店をチェックして食べる。ラーメンを食べた後は、アイスクリームなど甘さのアタックが強いものを欲してしまうので食べる。さらにおやつを食べて、夜もラーメン店に行く。
「夜はビールとギョーザなどのつまみを頼みつつ、スマホで『孤独のグルメ』などのグルメ系のドラマを観て、頃合いになったらラーメンを頼む。それだけでは足りないので、ご飯ものもつけます。チャーハンやじゃこ飯、ネギトロ丼などが好きです。カレーがある店もあるけれど、スープの香りを消してしまう気がして頼みません」
話を聞いていると、1日の摂取カロリーは3000kcalを超える。
「ウチの体重計は基礎代謝カロリーも出してくれるんですが、それは1400kcal程度。太るのも当たり前ですね」
当然、健康診断の結果も悪い。血糖値は高く、肝臓の数値も悪い。問題なのは塩分の過剰摂取による高血圧だ。上は160mmHg、下は100mmHgとかなり危険な領域をマークしている。
「ラーメンにはまる前までは、ほとんどAとBだった診断結果が、DとEだらけになりました。特に高血圧がひどく、お医者さんからも『これはやばいね』と言われるほどです。でも漫画家の赤塚不二夫先生のように、診断結果が悪くても好きに飲み食いして、長生きした人もいる。我慢のストレスを考えたら、食べたほうがいいと自己判断しました」
なぜ、そこまでラーメンにはまったのか。