妻の浮気がきっかけで離婚し上京

「私は京都府出身なんです。京都はそのイメージとは異なり、個性的なラーメン屋が多く、地元の人はみんなラーメン好き。私もその1人です」東京に進出している店も多く、一例を挙げると、「京都ブラック」と呼ばれる醤油のスープで知られる『新福菜館』や『本家第一旭』、背脂系スープが特徴的な『中華そば ますたに』、全国チェーンの『天下一品総本店』など。「他にも行列店は多く、『博多長浜らーめん みよし』、ネギの入れ放題で知られる『ラーメン横綱』など、クセとアクが強いラーメンが多いんです。

私は2018年に東京に出てきましたが、それまでずっと京都にいた。それまでは週に1回程度、ラーメンを食べる普通の人でしたけど」

第一旭本店の特製ラーメン
第一旭本店の特製ラーメン(写真=小倉商事/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

晋太郎さんが卒業したのは、京都にある名門私立大学だ。父親も兄もその大学を出ており、親戚も家族もみんな関西地方に住んでいる。

「東京に出てきたのは、離婚したからです。結婚は30歳のときに親のすすめでしました。大学を出てからずっとビルメンテナンスの会社で営業として勤務していて、ちょうど仕事が忙しかったんです。同い年の妻は早く子供が欲しかったのですが、私は仕事漬けで子づくりができなかった。そこで妻が浮気をした。私がショックを受けていると、6年間の結婚生活で数えるほどしかセックスをしないことに対して、罵られた」

人としての尊厳を叩き割るような妻の発言に、晋太郎さんの心は折れた。

東京で食べられるラーメンは2万種類を超える

「仕事もうまくいかなくなり、リセットするなら最後のチャンスだと思いました。それなりに実績もあったので、転職活動をすると今の会社に採用されたんです。施設の管理やマネジメントができる人材は少ないので勝算はあったのですが、あっさりと決まりました」

離婚もして心機一転、単身東京へ。

「離婚したらすごく楽しかったんです。6年間、貯金をさせられており、その半分は元妻に奪われました。購入したマンションも奪われた。ウチの実家が頭金を出したんですよ。元妻はタカりだったと思います。身ぐるみはがされましたが、それでも貯金は200万円ほどあり、自由に使えるお金も増えた。好きなことをしようと思ったときに、思いついたのがラーメンだったんです」

ラーメンの激戦区である東京は、新しい味、美しいビジュアルのラーメンが続々と登場している。東京都にあるラーメン店の軒数は2696軒(2020年タウンページ調べ)。1店舗当たり、10種類の味のバリエーションがあると仮定して、東京で食べられるラーメンは2万種類超。1日に3食食べたとしても24年以上かかる。

「そうなんですよ。上京していて感動したのは、テレビで流れる東京のラーメンがすぐに食べられること。数時間待ちと聞き、ダメ元で行ってみると意外と入れる。メディアが言っていることはウソばかりだと思いました」