※本稿は、今井一彰『名医が教える 炎症ゼロ習慣』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
「よく噛んで食べる」のすごい効果
「よく噛んで食べなさい」。先生や両親などから、だれもが一度はこう注意されたことがあるでしょう。聞き飽きたという人も多いでしょうが、実はこの昔ながらの教えは、慢性炎症の予防や改善に役立つことを知っていましたか?
その秘密は唾液にあります。
食べ物を噛んでいると、その刺激が脳に伝わって、反射的に唾液が分泌されます。この唾液には、体のサビ(活性酸素)を除去するはたらきがあるのです。唾液には抗酸化作用のあるペルオキシダーゼという酵素が含まれているんですね。
さらに、唾液には抗ウイルス・抗菌作用を持つ物質も含まれています。唾液には体にとって悪い菌が侵入しないように防ぐ役割もあるわけです。
唾液には歯周病を抑えるはたらきもある
唾液がたっぷり出ていると、炎症を引き起こす感染症にかかりにくくなります。
たとえば、歯周病も感染症の一種で、慢性炎症をともないますが、唾液にはこの歯周病の原因となる歯周病菌の増殖を抑えるラクトフェリンとラクトペルオキシダーゼという成分が含まれています。これらの成分は歯周病菌だけでなく、多くの病原菌への抗菌作用、抗炎症作用などがあると言われています。
さまざまな健康効果を持つ唾液ですが、20代をピークにして、その分泌量は徐々に減少します。赤ちゃんはよだれでベタベタになりますが、年をとると口の中は乾燥しやすくなりますよね。唾液が十分に分泌されているのは、健康な証拠。毎回の食事の際、「ひとくちで30回噛む」ことを目安に、唾液を出すことを意識してほしいものです。
よく噛んで食べるコツのひとつは、ひとくちの量を少なめにすること。口のなかに入れる量が多いとよく噛めないので、早めに飲み込んでしまいがち。噛む回数が減ってしまうからです。ひとくちを控えめにして、よく噛んで味わって食べるようにしましょう。