病気を早期発見するにはどうすればいいか。医師の今井一彰さんは「慢性炎症は自覚症状がないまま炎症が進行し、肝臓がんや胃がん、心筋梗塞などにつながるリスクがある。特に気をつけなければいけないのは、全身に炎症物質を広げる歯周病だ」という――。

※本稿は、今井一彰『名医が教える 炎症ゼロ習慣』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

歯痛
写真=iStock.com/AH86
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自覚症状のない「サイレントキラー」

慢性炎症によって起こる病気はさまざまにあります。

まさに「炎」のようにボッと勢いよく燃えて鎮火も早いのが急性炎症なら、慢性炎症はボヤ(小火)のようなもの。火種がくすぶったままじわじわと広がるように体をむしばみ、最後にはおそろしい病気を引き起こします。

慢性炎症による病気のこわいところは、急性炎症のように強い症状がないところです。

そのため、なんとなく調子が出ないなと感じることはあっても、ほとんどの場合、自分では気がつきません。

自覚症状がないまま同じ場所で炎症が続いてしまって、いつのまにか細胞が壊され、臓器や血管などの機能が低下してからはじめて病気になっていることに気づくのです。

歯周病も、たまに出血したり、患部がうずいたりすることはありますが、初期には自覚症状がないことがほとんどです。歯周病が進行して、歯がグラグラになってから気づく人も少なくありません。

このほか、次に紹介する病気も慢性炎症が原因のもので、気づかないうちに進行して、命にかかわるような病気につながるリスクがあります。

そのため、慢性炎症は、「サイレントキラー」と呼ばれることもあります。

慢性肝炎から肝硬変・肝臓がんを発症

肝臓の炎症が6カ月以上続いている状態を「慢性肝炎」と言います。その原因としていちばん多いのは肝炎ウイルスです。B型、またはC型肝炎ウイルスに感染すると、一時的な炎症(急性肝炎)で治ることもありますが、治りきらずに長引いた場合、慢性的に炎症が続くことがあるのです。

このほか、アルコールや食生活の乱れ、運動不足などの生活習慣が原因になることもあります。

肝臓で慢性的な炎症が起こると、肝臓の細胞が壊される→修復される→壊される→修復される……と破壊と再生が繰り返されることになります。すると、細胞が正常に修復されず、線維成分が蓄積して「線維化」が起こります。

結果、肝臓の組織の柔軟性が失われて硬くなり、肝臓の機能が低下することに。これが肝硬変です。肝硬変になると、肝がんを発症しやすくなることもわかっています。