「やわらかい食べ物」で陥る悪循環

炎症を抑えてくれる唾液。十分に出すためにはよく噛んで食べることが大切ですが、食事中に噛む回数は昔よりもずいぶん、減少しています。あるデータによると、一食の咀嚼回数は、鎌倉時代は2654回だったのが、20世紀のはじめごろだと1420回、現代になると620回と大幅に減っているそうです。

その大きな理由のひとつが、食べる物のかたさ。現代の食卓では、カレーやハンバーグ、ポテトサラダ、パスタやラーメンなど、やわらかくて、あまり噛まなくても食べられる食べ物が増えているからです。

やわらかいものばかり食べていると咀嚼に必要な筋肉が衰えて、かたいものが食べられなくなり、さらに筋肉が衰えて……という悪循環に陥ってしまいます。

カレーとラーメン
写真=iStock.com/Gyro
※写真はイメージです

よく噛むことは肥満防止につながる

毎日の食卓に、かたくて噛みごたえのある食品も並べるように意識しましょう。

たとえば、根菜類やナッツ類、乾物などを積極的に使ったり、ひき肉や薄切り肉よりもかたまり肉、麺類よりもお米(とくに玄米)を選ぶとよいですね。

素材を大きめに切ったり、加熱時間を短くしたり、調理のしかたによって噛む回数を増やす工夫をしてみましょう。また、薄味のほうがよく噛んで味わうようになり、咀嚼回数を増やせます。

よく噛んでゆっくり食べれば、肥満の予防にもなります。人が「おなかいっぱい」と感じるのは、脳の満腹中枢を刺激する「レプチン」というホルモンが分泌されてから。これは食事を始めてから約20分後です。噛む回数が少なく早食いの人は、満腹と感じる前に必要以上の量を食べて、太りやすい傾向があります。

愛知県内に住む男女4742人を対象にした調査では、食べるスピードが速いほど肥満度(BMI)が高い傾向にあり、さらに20歳のときと比べて、将来の肥満度の増加量も高くなるという結果が出ています。肥満防止のためにも、よく噛んで食べることが重要だということが科学的に証明されているのです。