地球にとって人間は必要な存在なのだろうか。32歳の派遣社員の男性は、地球の未来のために、極力ゴミを出さない生活をしている。月収25万円のうち3万~4万円程度は志ある団体に寄付しているという。ライターで編集者の沢木文さんが書いた『沼にはまる人々』(ポプラ新書)より紹介しよう――。(第2回)

※本稿は、沢木文『沼にはまる人々』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。

悩む人
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環境意識が低い親にキレていた子供時代

浩平さん(32歳)は広告代理店勤務を辞めて5年になる。現在は派遣社員として働いているが、生活はギリギリで、友達も恋人もいないという。それは環境問題について真剣に考えているからだ。まずはそのキャリアについて伺った。

「子供の頃から環境に興味があり、故郷の九州の自然が破壊されるのを危機感とともに調べていたんです。特にウチの近くにある池がアオコで臭くなることについて、危機感を覚え、役所に抗議文を送ったり、親が買ってくる洗剤の銘柄についてもキレるように文句を言っていました」

浩平さんが言う「アオコ」とは、プランクトンのことだ。洗剤、農薬、肥料などに含まれる、リンやちっ素など植物プランクトンの栄養になるものが川や湖など流れ込むと、富栄養化が起こり、発生する。アオコが発生すると、水が臭くなってしまう。

「大人に抗議をしても、『うるさい』と言われるだけ。母からは煙たがられていました。でも中学・高校生になると、世の中のことがわかってくるし、部活や受験で忙しくなる。環境問題よりも取り組む課題が多くなり、次第に忘れていたんです」

都内の中堅大学に進学し、環境についての活動を再開した。当時は「サスティナブル(持続可能)な生活」というスローガンが掲げられ、「Reduce(リデュース/極力資源を使わずに生産する)、Reuse(リユース/再利用する)、Recycle(リサイクル/廃棄物の有効活用)」が叫ばれていた。