相手の時間を奪うことを避ける5%社員
調査を進めたところ、さらに興味深いことが分かりました。
「心理的安全性」が高く、何でも言い合えるチームに所属していた「人事評価トップ5%社員」は、20代の頃、あえて「今ちょっといいですか?」や「1分だけいいですか」といった声かけをしないようにしていた、というのです。
上で述べた、成果を出し続けるチームの利点を自分から捨てるような行為です。これはいったい、どういうことなのでしょう。
詳しく話を聞いたところ、5%社員は、空気を読まずに話しかけて相手を不快にさせてはいけないと、唐突に話しかけることを避けていました。相手を気遣い、相手の都合や喜怒哀楽の変化をうかがいながら、声をかけるタイミングを計っているようです。
過剰な気遣いのマイナス面を理解して「気遣い」する
一般的に、過剰な気遣いは、チームワークに支障を来すことが調査で分かっています。過剰な気遣いがあると社内会議が増え、会議のための会議が開催されることになりがちです。
上司に気遣いすると作成する資料ページも増えます。重要そうな情報を集めて必要そうなページを作っても、実は上司はまったく必要としていないケースは、クライアント企業でも多々起きていることです。
重要な資料は9割使われますが、重要“そうな”資料は2割しか使われません。調査の結果、上司と部下との認識ギャップが不要な作業時間を生み、「残業沼」にハマる一因となっていることが判明しました。
にもかかわらず、5%社員は、あえて気遣いをすることを選択しているのです。
「1分だけいいですか?」が1分で終わる可能性は1%未満
そもそも「1分間だけ(話しても)いいですか?」と声をかけても、話が1分で終わることはまずありません。本当に1分で終わる確率は1%未満でしょう。
わざわざ会議や打ち合わせの時間をセッティングするほどではない内容だから、忙しい相手に「1分だけ」という表現になるのでしょう。また、相談を持ちかける側にも「『1分だけ』と言えば、相手は忙しくても手を止めて話を聞いてくれるはず」という目論見があるのではないでしょうか。
しかし、1分どころか、10分経っても20分経っても話が終わらなければ、相手の「信頼」を損ねることにもなりかねません。