燃費至上主義からの転換

2つ目に小沢が驚いたことがあります。それは思った以上に燃費至上主義ではなかったこと。

今回特筆すべきはパワートレインの進化もあり、従来の改良版であろう5世代目THS II(トヨタハイブリッドシステムII型)の1.8リッターハイブリッドに加え、排気量を増やした2種類のハイブリッドが追加されました。

詳しいスペックは明らかになっていませんが新開発の2リッターハイブリッドと、それをベースにリチウムイオン電池量を増した半分バッテリーEVとしても使える2リッターPHEV(プラグインハイブリッド)です。

画像提供=トヨタ自動車
(左)プラグインハイブリッドシステム(2.0Lプロトタイプ)、(右)エンジンルーム

こちらも予想外で速さとパワーアップを声高らかにうたっています。

2リッターPHEVのシステム出力は従来型1.8リッターハイブリッドのほぼ倍近い223ps。結果0-100km/h加速はなんと6.7秒。ライトウェイトスポーツカーであるトヨタのGR86の6.3秒に限りなく近いのです。

2リッターハイブリッドもシステム出力193psと従来型1.8リッターハイブリッドの122psより大幅にパワフル。さらに興味深いのは「燃費は従来型同等」と明記されていること。

新世代プリウスは明らかに燃費ではなく、速さであり、パフォーマンス重視なのです。

そのほかイマドキの車内のコネクティッド化を支える大型12.3インチタッチディスプレイや、バッテリーEVのbZ4Xでも採用済みのトップマウントメーター、2カ所の1500W外部充電、進化したソーラーパネルシステム、車載ドライブレコーダーなども備える予定です。

画像提供=トヨタ自動車
スタイリッシュな車内

ハイブリッドのパイオニアが迎えていた曲がり角

新型のスタイリッシュ化とパワーアップ化。この2つからうかがえるのは開発方針の明らかな転換です。

かつてのプリウスは燃費至上主義であり、量産車最良燃費を命題に開発されてきました。

しかし新型は明らかに快楽性であり、エモーショナル性向上がメイン。適度な燃費性能を確保した上で、よりカッコ良く、キモチ良く走れるように進化しています。

ここにはいくつかの時代変化があります。まずプリウスがハイブリッド専用車として一定の役割を終えたこと。既にトヨタ量産車のほとんどがハイブリッド化しています。小さい方からライズ、ヤリス、ヤリスクロス、C-HR、カローラ、カローラクロス、RAV4、ハリアー、ノア、ヴォクシー、アルファードなどなど。

2010年あたりまでトヨタのハイブリッドと言えばプリウスぐらいでしたが、今や珍しくありません。

同時に最近のプリウスは各マーケットで販売台数を落としています。例えば国内における2020年度の登録台数は約6万台で対前年比53.6%。2010年に3代目プリウスが国内で30万台以上も登録されたことを考えると時代を感じます。

北米マーケットにおいても21年のコンパクトカー販売ランキングは、1位のホンダシビック26万台に対し、プリウスは7位の6万台弱。他にハイブリッドモデルが増えた今では当然の話。

ハイブリッドのパイオニアとしての役割は確実に曲がり角を迎えているのです。