発売から約1カ月間で約2万5000台を受注し、好調なスタートを切った新型クラウン・クロスオーバー。自動車業界に詳しいマーケティング/ブランディングコンサルタントの山崎明さんは「しかしこの車型は、トヨタの社内事情によるジレンマを抱えている。最終的に本命は、大型SUVのエステートになるのではないか」という──。
新型クラウン・クロスオーバー。伊豆スカイライン多賀駐車場にて
写真提供=筆者
新型クラウン・クロスオーバー。伊豆スカイライン多賀駐車場にて

新型クラウン・クロスオーバーに試乗してみた

従来のクラウンのイメージとは大きく様変わりして話題となっている新型クラウン・クロスオーバーに試乗する機会を得た。

新型クラウン・クロスオーバーにはトヨタハイブリッドシステム(THS II)を搭載したモデルと、まったく新しいデュアルブーストハイブリッドシステムを搭載したモデルの2種類があるが、どちらにも試乗することができた。

前者は従来通りの燃費重視のシステムで、後者はパワーとレスポンスを重視し、燃費はTHS IIに劣るものの運転の楽しさを重視したシステムだ。

運転した感じは、前者でも軽快な運転感覚で乗り心地も良く、非常によくまとまった車で、クラウンを名乗るにふさわしい仕上がりだった。

後者は、スポーツカー並というのはちょっと言い過ぎかもしれないが、伊豆の山道でも非常に楽しめるスポーティーな仕上がりとなっていた。後席の居住性も十分以上のゆとりがあり、高級セダンにふさわしいものとなっている。

新型クラウン・クロスオーバー。伊豆スカイライン多賀駐車場にて
写真提供=筆者
新型クラウン・クロスオーバー。伊豆スカイライン多賀駐車場にて

開発者に聞く、クロスオーバーの課題

車の仕上がり具合としては十分以上に満足できるものだ。スタイリングも良い意味で日本車離れをした、きわめてスタイリッシュで魅力的なものである。

しかし、新型クラウン・クロスオーバーはイメージを一新する斬新なスタイリングをもち、クロスオーバーを名乗っているが、車型としてはあくまで独立したトランクを持つセダンなのだ。

新型クラウン・クロスオーバーをセダンとしたことの問題点については、10月に「『使い勝手はあくまでセダン』新発売の新型クラウン・クロスオーバーが抱えた“致命的なジレンマ”」という記事で指摘している。

今回の試乗のあと、開発担当者にそのあたりの事情を聞くことができたので、紹介したい。