イプシロン型のミサイルは軍事的に優れている

日本は2つの系統のロケットを持つ。液体燃料を使う大型ロケットと、固体燃料を使う小型ロケットだ。

液体ロケットは、現在の「H2A」で、JAXAは後継機「H3」を開発中だ。射場でロケットに液体燃料を注入しなくてはならないため、準備に時間がかかる。

一方、固体ロケットは、日本のロケットの父と呼ばれる糸川英夫博士のペンシルロケットが源流で、「イプシロン」へとつながる。

固体ロケットは、液体ロケットよりも扱いやすく、すぐに打ち上げられるという即応性がある。固体燃料をあらかじめ作って保管しておけば、必要な時にすぐに取り出して、打ち上げ可能だ。一方で、いったん火をつけてしまうとコントロールが難しいので、高い技術力が求められる。

北朝鮮のミサイル発射の兆候を事前に把握するのが難しくなっている背景に、潜水艦や車両、鉄道など、移動式発射台から打ち上げることが挙げられている。防衛省は資料で、そうした点から「一般的に固体燃料のミサイルが軍事的に優れている」と指摘している。

「打ち上げビジネス」を建前に技術を磨いてきたが…

日本の厳しい宇宙予算の中で、2種類のロケットを保有・維持することは大変だ。このため固体ロケットは2006年に高価格を理由にいったん廃止されたこともある。

だが、すぐに息を吹き返す。政治家などが「安全保障上の重要性から、固体ロケットの技術を失ってはならない」と強く求めたためだ。その後、廃止したロケットに代わって、「イプシロン」の開発が始まった。

ただ、日本はロケットに関してこうしたことは表立って言わず、打ち上げビジネス参入を強調してきた。「宇宙の平和利用」を掲げてきたことや、近隣諸国への刺激を抑えるためだ。ロケットを打ち上げると、すぐに韓国や中国などから「日本がミサイルを発射した」と批判されることも続いた。ロケットとはそういう技術なのだ。

だが、2種類のロケットを保有しているとはいえ、今の日本はその価値を生かせない状況にある。「イプシロン」は失敗原因を調査解明中。「H3」は技術トラブルで完成予定が遅れ続けている。