孤独を感じて眠れない…女性社員のBさん

Bさんは40代後半の独身女性社員です。コロナ前は、寒くなってくるとなぜか、夜寝るときに無性に寂しく悲しくなり、上手に眠れないと訴え、秋頃になると定期的に面談に来ていました。Bさんも、職歴は長く特に仕事や職場の人間関係にストレス原因はなく、プライベートも“普通”、ただし、パートナーはいないとのことでした。

近年のBさんは、コロナ禍1年目の面談では、在宅勤務と外出自粛のため誰にも会わず一人家にいると特に孤独を感じて無性に悲しくなり、寝入りにくいとおっしゃっていましたが、昨年ペットを買い、今は在宅勤務の方がペットと遊ぶ時間もあり楽しいとおっしゃっています。その後は寂しさや睡眠の問題はないようでした。

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このように、特別にストレス原因がなくとも、気分が落ち込んだり、寂しくなったり、睡眠に影響が出たりする人もいます。私は、産業医として話を聞くのみなので、診断はしませんが、このような人たちの原因の根底には、季節性やスキンシップの低下などがあると考えます。

日光にあたるとハッピーホルモンが出る

実は、冬場にメンタルヘルス不調を訴える人が増えるのは、医学的にはよく知られ、季節性情動障害(Seasonal Affective Disorder:SAD)と呼ばれています。秋から冬にかけて気分の落ち込み等の症状が出現するも、特段に原因となるストレスはなく、ほとんどの人は、春になると自然に元気になります。その原因は秋から冬の日照時間の低下で日光に当たる時間が減ることとされています。

人体は日光に当たると、セロトニンという脳の神経伝達物質が合成されます。うつ病の人の脳内はセロトニン不足の状態であることが知られており、近年の抗うつ薬の多くは、セロトニンの合成を促したり、分解を阻害する作用の薬です。セロトニンは別名ハッピーホルモンと呼ばれ、気持ちが明るくなるなど、精神面に好影響を与えるホルモンで、人の気分に密接に関わっているのです。このセロトニンが不足すると、気分の落ち込みや疲労感、意欲低下など、うつ症状が出現すると言われています。

また、日光を浴びると、人は体内でビタミンDが作られます。ビタミンDは、カルシウムの吸収を促進するだけでなく、人の免疫機能を調整・維持します。このため、ビタミンDの欠乏もまた、季節性うつ病と関連しているといわれています。