トルコの過去の通貨危機は固定相場制度の下で生じたため、通貨レートは、一気に切り下がり大暴落した。そのため経済への悪影響も非常に大きく、政権の交代にもつながった。しかしエルドアン政権の下では、変動相場制度のため長期かつ緩やかに通貨危機が進行している。

それゆえ経済への悪影響も急には起こらず、エルドアン政権の退陣につながるような事態になっていないのだろう。しかし通貨安には歯止めがかからず、高インフレが定着している。そうした中で生じた株価の上昇は、インフレヘッジという性格を強く反映するものであり、株価の上昇が本来持つ景気回復期待の高まりという意味合いはない。

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逃げ場を失った現金が起こした「いびつな現象」

繰り返しとなるが、今年に入ってからのトルコの株高は、トルコが抱える特殊な事情を反映したものであり、決して健全な動きではない。

この現象をもってして、トルコ経済は強いと評価するべきではないし、未来は明るいという予測も立てることはできない。トルコの株価に関しては、むしろ急落リスクに警戒すべきである。

なお円安が止まらない日本だが、トルコのような現象が今すぐに起きることなど、まず考えられない。とはいえ通貨安は、トルコの株高のように、何らかのかたちでいびつな現象が起きる可能性があることは、心に留めておいてよいのではないか。

(寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)

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