円安、インフレが止まらない

円安に歯止めがかからない。年始のドル円レートは1ドル110円台半ばだったが、すでに10カ月弱で150円台目前まで下落している。

この急速な円安の背景には、資源高で貿易赤字が膨らんだという実需面の要因に加えて、日米金利差が拡大したという金融面の要因がある。特に後者の面は、ドル円レートの歴史的な下落の主因といえよう。

米国では、最新9月の消費者物価が前年比8.2%と伸びが依然として高止まりしており、歴史的なインフレが続いている。そのため米連銀(FRB)は政策金利(FFレート)を次々と引き上げており、11月1〜2日に開催される次回の連邦公開市場委員会(FOMC)でも0.75%の大幅利上げが視野に入る。

他方で日本の場合も、8月の消費者物価が前年比3.0%上昇と、インフレは着実に加速している。とはいえ、日銀の黒田総裁は物価の上昇は一時的な現象であり、安定したものではないという見方を堅持する。そのため、日銀は政策金利を▲0.1%に、また長期金利の上限を0.25%に据え置き続けており、そのことが円安を促している。

日本が金利をそう簡単に上げられない最大の理由は、財政の維持にある。

低金利環境を維持しておかないと、政府の利払い費が膨らみ、国庫が破綻する恐れが高まる。こうした事態を回避するためには、低金利を維持せざるを得ない。そのため、円安によりインフレが加速したとしても、日本はインフレ抑制のための利上げをすることが難しい。

ところで、世界各国が米国に追随し金利を引き上げているが、通貨安に歯止めはかかっていない。そのため、日本が経験している歴史的な円安について、主因はドル高にあると説明する論者がいる。

一方で、主要通貨の中で、対ドルレートの年初来騰落率を比較すると、円は一番売られている通貨でもある。日本の側にも大きな円安要因があるのである。

通貨安のトルコで起きている株価上昇のナゾ

ここで話をトルコに転じたい。トルコの通貨リラは長期にわたって下落しており、またインフレもかなり深刻な状況となっている。

具体的には、トルコの最新9月の消費者物価は前年比83.5%と、16カ月連続で上昇が加速した。また先行指標となる生産者物価も同月は同151.5%と再び上昇が加速しており、インフレが減速する兆しは全く見えない。

トルコリラ紙幣と100ドル紙幣の束
写真=iStock.com/Mehmet Kalkan
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