新商品をバンバン出すのは「52週分の棚」を守るため

彼の示唆は重要だ。

1970年代の終わりまで、スナック、カップ麺、おにぎり、弁当といったものはすべてお菓子屋、食料品店という個店が扱っていた。すると、売れる数は限られてしまう。また、氷菓、冷凍乳菓などはアイスストッカー、冷凍配送車を持つ大メーカーしか全国で販売できなかった。

いくら、おいしい商品を作ったとしても、売る場所がなかったのである。コンビニの登場、普及により小さな食品製造企業でもヒット商品を出しさえすれば成長できるようになった。

付け加えると、ネットの時代になってからは通販という販売、配送チャネルが利用できるようになった。これまた小さな会社でもネット通販を上手に利用すれば伸びていくことが可能になったのである。

話は赤城乳業とコンビニに戻る。

コンビニは毎日のデータを重要視する小売店だ。売れ行きが落ちたらすぐに棚から外してしまう。すると、メーカーはつねに新商品を開発しなくてはならない。ガリガリ君はロングセラーではあるけれど、1種類の味だけではもたない。そこで、毎月のように新商品を出さざるを得なくなった。

岡本は言う。

「1年間は52週あります。コンビニの場合、その52週の各週にめがけて新商品を発売して、売り上げをつくっていくという形になっています。赤城乳業が新商品の数を出すのはコンビニが主な販売チャネルということもあるんです」

写真=iStock.com/Vorawich-Boonseng
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ガリガリ君シリーズだけで年間20品

ここで岡本のプロフィールと同社の開発体制を記しておく。

「私は2009年4月に入社し、商品開発部で新商品とガリガリ君を担当しました。2015年9月まで商品開発を担当して、同年10月からはマーケティング部でガリガリ君のマーケティングを担当しています。マーケティングとは商品の企画、こういう味にしようとか、こういうプロモーションでお客さまとコミュニケーションをとろうとか。アイスのレシピをつくること以外はほぼマーケティングの担当です。

一方、商品開発はレシピを作ること。自分でレシピを作って、試作をして、それを工場の大量生産にのせるところまでやっていました。マーケティングはレシピは作りません。開発部にこういうアイスを作ろうよと働きかけて、アイスが出来上がったらそれに対してパッケージはこうしようなど、トータルでつくっていく感じです」

同社ではガリガリ君だけで年間に発売する枠が20品ある。定番のソーダ、コーラ、グレープフルーツ、季節によってメロンソーダ、ゴールデンパイン、ぶどう、イチゴミルクといったものがあるから、過去にやったことのない味を開発するのは数点といったところだろうか。