企画開発するのはひとりの若手社員

そのうち、2012年のコーンポタージュ味は大ヒットしたが、14年のナポリタン味は失敗、17年のメロンパン味、18年のチョコミント味は小ヒットといったところらしい。

また同業他社の開発部と違うところは原則として、ひとりの若手社員が企画開発するところだ。岡本もコーンポタージュ味の開発はひとりでやった。ただし、役員の決裁を仰ぐプレゼンテーション、そして、商品化はさまざまな職種の担当者も加わる。

ガリガリ君の新フレーバーを見ると、商品キャラクターは4つに分けることができる。

1 「その発想はなかった」という、攻めている商品(例:コーンポタージュ)
2 食感や味の組み合わせを意識した商品(例:チョコミント)
3 素材や製法にこだわった本格派商品(例:Wりんご ふじ&王林)
4 トレンドを意識した商品(例:レアチーズ)

いずれも、おいしさだけでなく、話題性と物語を感じるものになっている。そして、商品の骨格とも言えるのは「ガリガリ君はコミュニケーションツール」という考え方だ。

写真提供=赤城乳業
赤城乳業の本庄工場

岡本は言う。

「食べなくても、話題が生まれるならいい」

「ガリガリ君がどういう存在なのかが大事だと思っています。例えば高級アイスは自宅で、1人でご褒美のように食べます。しかし、ガリガリ君は小・中学校の部活帰りにコンビニや駄菓子屋の前で食べたりした懐かしい味であり、若い社会人だと飲み会の後にコンビニで買った味なんです。1人で食べるのではなく、複数で食べて、わいわい楽しくコミュニケーションするときに存在しているのがガリガリ君です。

だからガリガリ君の価値はご褒美として食べる味ではなく、みんなで楽しむ思い出の商品。コミュニケーションができる味で、つい誰かに伝えたくなる商品。だから、定番だけでなく、新商品を開発することで会話やコミュニケーションが生まれていく。食べない人でも、『ガリガリ君ってコーンポタージュ味があるんだよ、知ってた?』と話題が生まれる。それでいいんです」

ガリガリ君は食べない人でも客になることができる商品だ。ガリガリ君を話題にしてくれる人がいたら、その人もまたユーザーだと岡本は言っている。こういう考え方が商品の幅を広げ、客層を増やしている。(第2回につづく)

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