大企業を大儲けさせている「輸出還付金制度」

海外で販売する商品には消費税が発生しないため、仕入れの際に支払った消費税分は「輸出戻し税」というかたちで還付される。これが「輸出還付金制度」と呼ばれるものだ。

輸出で稼ぐ大企業にとってこれは非常にメリットが大きい。表向きは「仕入れの際に支払っている」ように見えても、実際には下請けの中小企業に対する買い叩きは常態化しているので、実質的には消費税分は支払っていないに等しいケースがものすごく多いからだ。

そうなると、支払ったと見なされる消費税分はまるまる還付される。

2019年12月9日付の全国商工新聞によれば、2018年度の輸出戻し税の還付額は、トヨタ自動車は3506億円、日産自動車は1509億円、本田技研工業は1216億円にのぼると試算されている。

この金額は消費税が8%当時のものなので、2019年10月に税率が10%になって以降は、還付金はさらにふくらんでいる可能性が高い。

池田清彦『平等バカ』(扶桑社新書)

もちろん、これらはすべて合法であり、彼らは不正など犯してはいない。とはいえ消費税率が高ければ高いほど得をするのは確かなのだから、財界の大物たちは消費税増税に決して反対しないのだ。

こうなると買い叩かれたほうの中小企業にものすごいしわ寄せがいくようにも思えるが、課税売上高が1000万円以下であれば、消費税は免除されるので、売り上げ規模が小さい企業に痛みはない。ただしその場合、国には結局、何も入ってこないということになる。

消費税の回収率が半分以下というのはそれらもろもろの結果である。こんなことがまかり通っているのだから消費者は完全にバカにされていると考えたほうがいい。

不公平感などという感覚的なものではない本当の不公平は、このように水面下で確実に起こっているのである。

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