日本の大学の学費はなぜ高いのか。生物学者の池田清彦さんは「教養ある知識人を増やしたところで、資本主義にはたいして役に立たないどころか、反政府分子になる恐れも強い。むしろ庶民は読み書きそろばんで十分――。そのように日本の指導者層が考えているからではないか」という――。

※本稿は、池田清彦『平等バカ』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

高度な教育をする気がないのだろうか
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「富裕層の子ども」でなければ東大には合格できない

経済的な格差はあらゆる格差の元凶だが、とりわけ教育の格差に及ぼす影響は大きい。

教育社会学者の舞田まいた敏彦としひこの調査によると、大学生のいる家庭の平均年収は私立が871万円、国立が854万円で、大学生の子がいる世代と想定される40代の世帯主家庭の平均である702万円や、50代の世帯主家庭の平均である782万円(「平成30年学生生活調査結果」日本学生支援機構、「平成30年国民生活基礎調査」厚生労働省の数字)と比較して、明らかに高くなっている。

また、学費が相対的に安い国立大生の家庭の年収のほうが高いのは、「国立大学は入試の難易度が高く、幼少期より多額の教育投資(塾通いなど)が求められるため」だと舞田は分析している。

つまり、ある程度以上の富裕層の子どもでなければ、国立大学法人の大学に入る学力をつけられないということだ。

東大生に限っていえば、その家庭の年収分布は40〜50代が世帯主の一般的な家庭のそれとは大きく異なっており、半数以上は世帯年収が950万円を超えているという(図表1)。