ドバイには世界中からおいしいものが集まる

実はトリュフフレーバー自体は、3年ほど前から日本の食品業界のトレンドになっていた。それを察知していた成城石井も、トリュフ味の商品を拡大しようとしていたタイミングだったという。バイヤーは黒トリュフポテチを食し、日本でも売れると直感した。

それにしても、なぜドバイなのか。

「欧米の食品見本市は他社のバイヤーさんもよく行かれるので、自社ならではの新しいものを発掘するには、文字通り世界中の見本市に足を運ぶ必要があります。中でもアラブ首長国連邦は、富裕層の方々が世界から集まる国。舌の肥えたグルメである方のお眼鏡にかないそうな食品が、世界各国から集まってくる市場なんです」(八尋氏)

こうして、ハンターフーズ社の黒トリュフポテチは2020年夏に日本で販売開始。またたく間に人気に火が付き、現在では成城石井が取り扱うすべてのポテトチップスの中でもっとも売れる商品となっている。

港にたまったコンテナを有効活用して輸送費を抑える

ハンターフーズ社の黒トリュフポテチは国内での発売当初、輸入ものにしては比較的価格が安かった。たとえば、あるスペインのポテトチップスの場合、40gの小袋で店頭価格は税込み300円台とかなり高かったし、そこまでではないにしても、欧米のプレミアムチップスは40gで税込み300円近いものも少なくなかった。しかし黒トリュフポテチはそれらと比較すると、1gあたり2分の1程度の価格だったのだ(2022年9月30日現在の店頭価格は125g税込み486円)。むろん、国内大手メーカーの一般的なポテトチップスの店頭価格はもっと安く60gで税込み100円台前半が一般的だが、海外商品の中では安い部類だった――といってよいだろう。

輸入ポテトチップスが高くなるのは仕方がない。他商品に比べて輸送効率が悪く、輸送費が価格に乗ってしまうからだ。

「ポテトチップスは袋入りスナック菓子という性質上、『空気を運んでいるようなもの』とよく言われます。チョコレートやキャンディなどに比べると、同じ容積のコンテナでも運べる量が少ない。コンテナ積載率が低いんです」(同)

ところが、である。

「ドバイは輸出より輸入がずっと多い港なので、コンテナがたまってしまうんですね。ずっと置いておくわけにはいかないけれど、空っぽのコンテナをそのまま戻すと無駄に輸送費がかかってしまう。だから多少輸送費を安くしてでも、コンテナに何か入れて港から減らしたいという事情があります。成城石井が輸入を始めた当時は、このような状況からポテトチップスを相場より安く運べたんです」(同)

欧米のポテトチップスだったら、こうはいかなかった。ドバイ発のポテトチップスだからこそ、価格を抑えられたのだ。