隔絶された経済圏である北海道は、事業分野によっては本州企業の進出が遅れ、専門性の乏しい地元企業が生き延びる“ぬるま湯”の一面がある。そうした地元業者は本州企業が進出してくれば、あっという間に吸収されるか、淘汰される。

浜中淳『奇跡の小売り王国「北海道企業」はなぜ強いのか』(講談社+α新書)

いずれにせよ専門業者間の競争が少なく、外注しても品質、コスト両面で十分なメリットを得られない場合が多い。

コンビニ業界ナンバーワンの販売力とブランド力を背景に、日本全国の名うての専門業者を競わせ、もっともコストパフォーマンスの高い企業を外注先に選択できるセブンとは、事業環境が根本的に異なるのだ。

わらべや日洋ホールディングスという東証プライム上場企業をご存じだろうか。

セブンが日本に1号店を出した直後から弁当、おにぎり、惣菜を納入している食品メーカーである。全国にセブン専用の工場を23ヵ所持ち、22年2月期の連結売上高1923億円の実に78.6%をセブンとの取引が占めている。セブンにとって最大の外注先企業である。

これほどの実績がある企業であっても、セブンは商品に対する高い要求水準を緩めない。たとえば、15年秋に発売したチルド弁当の開発をわらべや日洋に任せたものの、試食したセブンの担当者が「品質に満足できない」と評価を下した結果、製造は別の業者に依頼されることになったという。

大災害時に示した「持つ経営」の底力

専用工場を全国に持つほどの取引関係になっても、セブンが納得いかなければ別の企業に取引を切り替えられてしまう。外注先企業にとっては死活問題、ライバル企業にとっては千載一遇の好機である。

もともと力のある専門企業が常に緊張感を持って開発に取り組まざるを得ない状況が、セブンの高い商品力につながっているわけだ。

対するセコマは、地元に頼れる専門業者が少ないという事情に加え、純粋な事業規模だけをとれば、道外を含め1176店、全店売上高1837億円(20年)の中堅チェーン。セブンと同じ土俵で勝負しても、セブンの商品力を超えるのは不可能だ。

そこでセコマは、食品工場を自分で持ち、自社ブランドの食品、酒、飲料のほとんどを自家生産する体制を整えてきた。セブンのように自分たちの思い通りの商品を外注先につくらせることは難しい。ならば、自分自身でつくってしまおうという発想である。

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