コープさっぽろの宅配サービス「トドック」が急成長している。北海道のほぼ全域をカバーし、利用者は約44万人。さらにアマゾン進出を見据え、取扱商品の価格はすべてアマゾンの売価を下回る設定にしているという。北海道新聞の浜中淳記者の著書『奇跡の小売り王国「北海道企業」はなぜ強いのか』(講談社+α新書)からお届けする――。
宅配トドックの車両
写真提供=コープさっぽろ
コープさっぽろの宅配サービス「トドック」の車両

パルシステムなどと同じ「生協の宅配」だが…

道民の食生活を守る強固なセーフティーネットの役割を果たしている事業者として、もう一つ忘れてはならないのが、コープさっぽろである。北海道の食品小売市場でほぼ8割のシェアを握る3極の一角で、前節で指摘したように、店舗事業の拡大は限界に近付きつつある。

ここで取り上げたいのは宅配事業者、移動販売事業者としてのコープさっぽろだ。

「『ポツンと一軒家』というテレビのバラエティー番組があるが、トドックを利用すれば、あのような場所に住んでいる人も、札幌の大型食品スーパーとドラッグストアを合わせたぐらいの買い物はできる」。コープさっぽろの大見英明理事長は、宅配システム『トドック』の利便性をそう表現する。

トドックは、首都圏でコープデリ連合会(本部・さいたま市)が手がける『コープデリ』やパルシステム連合会(同・東京都)が手がける『パルシステム』などと同じ〈生協の宅配〉だ。

ネットスーパーが、不特定多数の消費者を相手に、注文を受けるごとに商品を届けるのに対し、生協の宅配は、事前に利用登録した組合員を対象とした定期宅配サービスである。

週1回、決まった曜日の決まった時間に組合員宅に商品を配達。組合員はいっしょに届いた次回分の商品カタログから欲しい物を選んで注文用紙に記入し、翌週に配達担当者に手渡す。

道内でトドックが配達できない地域は、北海道本島と結ぶフェリー便の本数が少ない天売島、焼尻島(いずれも羽幌町、計約290世帯)だけ。それ以外は利尻島、礼文島、奥尻島などの離島でも、内陸の限界集落でも、食品を中心に必要十分な種類と数の生活必需品が毎週届く。

平均利用率は86%、客単価は店の2.3~2.6倍

大見氏の発言を裏付けるように、人口減が進む北海道で、トドックの利用登録者は逆に急速に伸びている。

20年度は1年間で3万人増加し、年度末時点で41万人に。21年度も同じペースで増え、22年3月8日現在で43万9000人となった。トドック人気に後押しされ、コープさっぽろの総組合員数も20年度以降の1年10カ月間で10万人増加し、21年11月24日に190万人に到達。世帯加入率は68%に上昇した。

トドックの利用登録者の1週当たりの平均利用率は86%。隔週や月1回といった利用の仕方をする人はいるが、登録だけでまったく利用しない“名ばかり登録者”は皆無である。