アマゾンの日本事業は急成長を続け、20年の売上高は204億6100万ドルと5年前の2.4倍となった。日本円に換算(1ドル=107円)すると2兆1893億円。EC(ネット通販)事業のほかに、クラウドビジネスなどの収益も含まれているため、単純比較はできないものの、あっという間に生協陣営の宅配供給高に並ぶところまで来た。
17年には、アマゾンプライム会員を対象に、生鮮3品を中心とする食料品だけで1万7000SKU、キッチン用品やベビー用品などの日用品・雑貨類を含め10万SKUを扱うネットスーパー『アマゾンフレッシュ』を首都圏の一部地域で開始した。対象エリアの拡大とともに生協の宅配との競合が激しくなっていくことが予想される。
大見氏は「アマゾンが北海道で本気の戦いを挑んできても勝ち残る。そのために強化してきたのが現在のトドックの姿だ」と言う。トドックの取扱商品数を18年秋に2万SKUに拡充したのも、アマゾンフレッシュの北海道進出に先手を打つ狙いがあった。
品目数を増やすための大型投資
とはいえ、品目数を一挙に4倍に増やすのは簡単ではなかった。当時の生協の宅配システムでは、40万人に及ぶ利用者ごとの注文商品のピッキング(仕分け)を迅速・正確に行う限度が「5000SKUまで」(大見氏)だったからである。
この限界を突破するためにコープさっぽろが着目したのが『オートストア』と呼ばれるノルウェー製の自動倉庫システムだった。
ニトリホールディングスがECの急拡大に備え、16年に日本ではじめて購入したことを知った大見氏は、ノルウェーのオートストア社を訪問し、生協の宅配向けに仕様変更が可能かどうかを打診。「通常のECよりも動作は複雑になるが、計算上は対応できる」との回答を得たことから、18年8月、8億5000万円を投じ、札幌近郊の江別市にある基幹物流施設『江別物流センター』に導入した。
70台のロボットが短時間でピッキングを行う最新鋭設備への投資が、従来の常識を超える品ぞろえを可能にした。
大見氏が宅配事業のベンチマークの対象としてアマゾンを明確に意識するようになったのは14年、神奈川県小田原市にあるアマゾンジャパンの小田原フルフィルメントセンター(配送センター)を見学したことがきっかけだったという。
アマゾンを上回る配送効率
総品目数30万SKUに及ぶ商品の入庫、包装、出荷までの工程が自動化され、流れ作業で進むさまに圧倒される一方、生協の宅配の優位性がどこにあるかを再認識することができたのだ。
「梱包された商品が配送業者別に流れてくるラインを見ているうちに重要な事実に気付いた。それは、箱の中の商品数はほとんどが1個であるということ。アマゾンユーザーの多くはいま必要な商品をスマートフォンで探し、ワンクリックで購入してしまう。複数の商品をまとめ買いするようなユーザーは非常に少ない。トドックの1配送当たりの商品数は15個だから、ラストワンマイルの配送効率は断然こちらが優れている」