〈ラストワンマイル(最後の1マイル)〉とは、最終配送拠点から顧客に商品を届けるまでの区間を意味する物流用語である。

注文があるたびに1個ずつ商品を運ぶアマゾンと、週1回決まった日に15個の商品をまとめて運ぶトドック――。この〈最終区間〉のコスト優位性を徹底的に高めることが、その後のトドック強化の柱になった。

宅配トドック_配達の様子
写真提供=コープさっぽろ
週1回決まった日に商品が届く。

過疎地でも効率よく宅配できるワケ

真っ先に取り組んだのが配送拠点数の拡大だ。15年時点で32ヵ所あった拠点の数を4年間かけて49ヵ所に増やした。その狙いは道内全エリアでラストワンマイルが1時間圏内となる物流網を構築することにあった。

浜中淳『奇跡の小売り王国 「北海道企業」はなぜ強いのか』(講談社+α新書)
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トドックの商品配達は、江別物流センターで利用者ごとのピッキングを一括して行った上で、大型トラックで道内各地の宅配センターに配送。そこから配達車両が利用者宅に届ける流れになっている。

従来の32拠点だと、宅配センターからもっとも遠い利用者宅までの距離が100キロを超え、片道2時間以上かかる場所がかなりあることが課題になっていた。

センターとの往復時間が長くなるほど、配達時間が短くなり、利用者が増えるたびに配達車両の台数を増やさなければならない。半面、往復時間の短縮だけを考え、人口の少ないエリアにフルスペックの宅配センターを配置していくと、今度は設備の維持コストが重くなる。

たとえば、総人口6万2800人の日高地方全域の配達を担う日高センター(新冠町)の場合、もっとも遠いえりも町東部地域までの距離は110キロ余り、配達車両が往復するのに5時間はかかる。だからと言って、日高地方の人口規模で宅配センターをもう一つ置くのは無駄が多い。

そこでコープさっぽろが採用したのが〈ハブ・アンド・スポーク〉方式の配送だ。新冠町とえりも町のほぼ中間点に当たる浦河町に『小型デポ』と呼ぶ倉庫型の中継施設(ハブ)を配置。日高センターからは11トントラックが配達車両3台分の商品をまとめて浦河デポまで輸送し、デポで待機している配達車両に積み替えて配達する。

現在50ヵ所ある配送拠点のうち10ヵ所は小型デポである。これによって道内全域でラストワンマイル1時間圏内を実現し、配達車両1台当たり一日80軒という効率的な配達が可能になった。

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