6月15日の中露首脳電話会談で、プーチン大統領が習主席の訪露を招請すると、習主席はコロナ対策を理由に拒否したという(7月4日付読売新聞)。
ロシアの野蛮な攻撃が国際的非難を浴びる中、中国はロシアと同列視されることを恐れ、距離を置いていた。
これで日台への八つ当たりは強まる
ところが、6月末の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が新戦略概念で中国を「体制上の挑戦」と明記すると、中国は「冷戦志向で、中国を中傷している」と反発。特に、岸田文雄首相の首脳会議出席を「NATOのアジア化だ」と非難した。
7月29日の米中首脳電話会談は、ペロシ議長の訪台を控えて台湾問題で応酬し、ウクライナ問題は議題に上らなかった。
秋の共産党大会で習主席が任期延長を目指す微妙な政治情勢の中、NATOが中国を敵視し、核心的利益とみなす台湾に米国が介入したことで、強硬姿勢をとらざるを得なくなったようだ。中国は再び「親露、反米」に転換した。
中国は本来の対応なら、訪台を仕掛けた米国に報復し、米領グアム島あたりの排他的経済水域(EEZ)にミサイルを撃ち込むのが筋だろう。しかし、米国と直接対峙するのは恐いので、抵抗しない台湾や日本に八つ当たりする構図だ。中国が親露姿勢を強めることは、ウクライナ情勢にも悪影響を与える。
皮肉にも「米国のオウンゴール」となった
ロシアはこの展開を歓迎している。評論家のセルゲイ・ミヘーエフ氏は「これはロシアの思う壺の展開だ。中国社会やエリートの間で反米感情が高まり、軍事オプションが避けられない可能性がある。その場合、ロシアという信頼できる支援者が必要になる。中国が対露制裁に加わる可能性もなくなった」とコメントした。
ロシアのニュースサイト「Pravda.ru」は、「中国はウクライナ戦争で米国とロシアの中間的立場をとり、二兎を追おうとしたが、ペロシ議長訪台で恥をかかされた以上、哲学を重視する中国は米国を許さない。今後、中露の友好同盟が強化され、中国はロシアへの武器援助に動くかもしれない」と指摘した。
国際問題専門家、アリョーナ・ザドロジナヤ氏は、「ペロシ議長のスキャンダラスな台湾訪問と米中関係悪化で、中国はロシアとの戦略的協力関係拡大に舵を切った」と述べ、「米国のオウンゴール」とする見方を示した。