「消費税」は27%だが、国民の不満は聞こえず
【池上】福祉が充実している、となると税金の高さが気になりますね。
【増田】日本で言う「消費税」にあたる「付加価値税」の標準税率は27%、とこれだけ聞くと驚くのですが、穀物や小麦などを使用した製品、乳製品などは18%、牛乳、卵、鶏肉、豚肉、魚などの食品、医療品、本、飲食店での食事、インターネット接続サービス、新築住宅など特定の品物・サービスに関しては5%に軽減されています
取材中に、「税金が高くて困っている」というような不満の声は聞きませんでしたし、話題にも出ませんでした。
オルバン政権になって、経済成長が著しいことも影響しているかもしれません。2012年にはマイナスだった経済成長が、以降、約2~5%の成長を続け、2020年はコロナで一時的に落ち込んだものの、2021年は実に7%を超える経済成長率を達成しました。
中国との深い関係が経済成長のカギ
【池上】ハンガリーの経済成長の理由はなんでしょうか。
【増田】理由の一つは、中国との関係です。この6月にも、中国パソコン大手のレノボが欧州で初めてハンガリーに設立した工場が稼働し始めました。オルバンは中国との関係を深めており、中国の名門である復旦大学のブダペストキャンパスを誘致してもいます。
しかし中国の大学は学費が高いから、結局は欧州に通う中国人学生が通うだけで、地元の人間には何の益もないのではないか、とか、あるいは当初の設立資金は中国が出してくれるけれど、結果的にはハンガリーが負担することになるのではないか、という懸念があり、現地では反対運動も起きています。
その先頭に立っているのが首都ブダペストのカラーチョニ・ゲルゲイ市長で、市内の道路に「香港自由通り」などと中国の嫌がる名前をつけて、「復旦大学・ブダペストキャンパス誘致反対」の姿勢を強く打ち出しています。ただ、政策としての中国傾斜は、オルバン首相に対する直接の批判にはつながっていません。