日本の金融市場を狙うグーグルの戦略

2021年7月13日に、グーグル(Google)が、QR決済・送金アプリのpring(プリン)の全株式を取得する契約に合意したことを発表した。なお、グーグルに株式を譲渡したのは、メタップス、ミロク情報サービス、日本瓦斯の3社で合計86%超である。GAFAと呼ばれる世界的なプラットフォーマーであるグーグルのわが国の金融ビジネスへの進出ということで大きな話題になった。

そこで、買収対象となったpringがどのような企業で、そしてグーグルがどのような意図で買収したのかについて説明していく。

pringは2017年4月、メタップス、みずほFG、みずほ銀行、WiL LLC.の4社の資本・業務提携を受けて、銀行と連携する決済アプリの事業化を行うために設立された企業である。出資の中心となるメタップスは2007年創業のIT企業で、すでに2015年8月に東証マザーズ(現東証グロース)に上場していた。

決済よりも「送金」に特化しているのが特徴

2018年3月にお金のコミュニケーションアプリpringがリリースされた。QRコード決済の機能もあり加盟店での決済に利用できる。ただ店舗での決済以上に、送金アプリであることが特徴である。徐々に提携銀行を増やしており、多くの銀行の口座との無料での連携が可能なので、ユーザーの他行間の送金を無料で行うことができる点が強みである。またユーザー間のコミュニケーション機能を持っており、割り勘での利用や、メッセージとともに送金をすることができる。

出資者でもあったみずほ銀行は、1年後の2019年3月にアプリpringと同様に、銀行口座との連携が無料でできる銀行系のキャッシュレスアプリとして、独自にJ-Coin Payをリリースした。この両アプリの提携金融機関を比較したのが図表2である。

筆者作成

みずほ銀行はpringにも出資しており、両アプリの推進に関与しており、コンセプトは重なる。そして、両アプリとも、店舗決済よりも手数料無料での送金が強みである。特にpringは3メガバンクとゆうちょ、りそな、埼玉りそなとインターネット系の主要銀行に対応しているので、メガバンクとインターネット銀行の複数銀行の利用者にとって、送金アプリとして利用価値が高くなっている。またグーグル買収後も旺盛な金融機関との提携を行っていて、2021年12月は3行、2022年1月から3月は8行と提携を発表した。