お金の動きを把握し、広告ビジネスを強化したい

一方J-Coin Payは、メガバンクであるみずほ銀行が運営主体であるため安心感があるとともに、地銀中下位行や第二地銀に加え、労働金庫13庫をカバーしている。さらに2021年12月13日に一気に全国74の信用組合と口座接続を開始し、提携金融機関が161となった。しかし、メガバンクの口座接続がみずほ銀行だけなので、J-Coin Pay内では活用できるケースが限定されてしまう点が弱みである。

単体では両者強みが異なっているが、pringもJ-Coin Payの両方とも無料であり、両方のアプリを併用すれば、かなりの範囲で無料での送金ができることになる。

買収したグーグルは、いうまでもなく世界的な検索エンジンのプラットフォーム企業であり、検索利用時の広告収入が収入源である。無料の検索エンジンから利用者のデータを得て、それを元に関連する広告を配信することを強みとしている。

わが国の金融のアプリに進出することで、さらに利用者のお金の動きも把握して、広告ビジネスの収益強化が可能になる。また、アンドロイドスマートフォンの非接触型のモバイル決済サービスであるGoogle Payと連携したサービスの提供等での活用の本格化が予想される。

Pring買収に続き、2022年3月には、みずほフィナンシャルグループとGoogle Cloudがデジタルトランスフォーメーション分野における戦略的提携合意を発表した。この提携も注目される動きである。

邦銀を脅かす「アップル銀行」が誕生する?

本稿の最後に、他の世界的プラットフォーマーであるアップル(Apple)、アマゾン(Amazon)、フェイスブック(Facebook)の2022年1月時点の日本の金融への進出状況を確認する。

まずアップルは、2016年10月25日にわが国でApple Payのサービスを開始している。Apple Payは、iPhoneやApple Watch等のデバイスに、クレジットカードやSuica、PASMOを登録することで、元のカードを出さずに決済ができるサービスである。

VisaカードをApple Payデジタルウォレットへ追加している人の手元
写真=iStock.com/martin-dm
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あくまでデバイスの利便性を高め、アップル製品のユーザーを増やすことが目的で、顧客のデータは利用しないというポリシーが特徴である。よって、カードの情報をデバイスに持たない点がセキュリティ上のアピールポイントである。ただ、利用できる店舗が限定されていることもあり、普及は停滞している。

アップルの動向で注目されるのは、アメリカで発行されているクレジットカードの「Apple Card」である。「Apple Card」は、「Apple Pay Cash」という仕組みと連動しており、銀行口座との連携ができ、個人間送金を行うことができる。

アップル自体が銀行になったのではなく、ゴールドマンサックスバンクおよびグリーンドット銀行の口座を利用したサービスだが、両銀行はあくまで黒子役となって、利用者からはアップルの銀行のように見える仕立てである。この仕組みが日本でも仮に実現できれば、日本の銀行にとっては大きな脅威になりうる。なおゴールドマンサックスバンクUSAの東京支店は、2021年7月7日に日本の銀行免許を取得している。