機器の所有もリカバリーもベンダー任せ

MINORIの開発規模は35万人月(一人の開発者が一カ月で開発できる規模を「一人月いちにんげつ」と言うが、その35万倍)、4000億円台の投資とされている。一人月100万円と仮定すると、それだけで3500億円となることから、投資には機器のコストがほとんど入っていないことになる。初期投資抑制の意味もあり、ベンダーの機器を借りている形態で従量制で使用料を払っていると思われる。

また、様々なハード機器関連のテスト、障害訓練を自由に行うためには追加の費用が発生するため、開発現場ではそのようなテストや訓練を最小限に絞っていたとも考えられる。さらにベンダー所有であることからリカバリー手順書の管理もベンダーが行うため、機器の故障に際してはみずほ内部の人間は対応できず、ベンダーにお願いする以外方策がなかったと推測される。

しかし先述したように、ベンダー要員を削減していたため常駐するベンダー要員のスキルレベルはあまり高くなく、リカバリーに手間取ったと推測される。

新銀行「LINE Bank」を立ち上げる予定だったが…

みずほフィナンシャルグループは、新システムMINORIの安定稼働を前提に今後のDXの推進を進める予定だった。また外部の企業との連携により、様々な新事業やサービスを展開ないし計画していた。それは、第一に銀行系キャッシュレスサービス、第二にスマートフォン専用銀行、第三にデータ活用事業である。

第一の銀行系キャッシュレスサービスについては、2019年3月、みずほ銀行はJ-Coin Payのアプリをリリースした。2022年1月現在、地方銀行や信用組合等、161金融機関での利用が可能となる一大勢力を築いている。しかし、他のメガバンクやインターネット専業銀行、大手地方銀行は参画していない。さらなる参画銀行の拡大には、システム障害の影響が否定できない。

写真=iStock.com/Nattakorn Maneerat
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第二のスマートフォン専用銀行については、2019年5月には、LINEと共同でLINE Bank設立準備を設立した。当初は、みずほ銀行が50%、LINEの子会社であるLINE Financialが50%の出資比率で、みずほは銀行のノウハウを提供することが主な役割だった。

一方のLINEは2019年6月にLINE Financial 51%、野村ホールディングス株式会社49%の出資比率で、スマートフォン専用証券であるLINE証券を開業している。LINE Bankはこれに続く形で、当初は2020年度に新しい銀行の設立を目指していた。