昨年末、SBIグループの連結子会社となった新生銀行には過去に3494億円もの公的資金が投入されている。その返済の行方が注目されているが、それは公的資金計2340億円を受けている他の地銀12行も同じだ。金融アナリストの高橋克英さんは「規模も業績も冴えない地銀が多く、返済どころか3度目の資金投入申請をしたところも。返済余力がなく塩漬けにされる可能性もある。地銀は甘やかされている」と指摘する――。
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「SBI新生銀行」の公的資金返済の行方

新生銀行は2021年12月に成立したTOB(株式公開買い付け)で、SBIグループが株式の約48%を握る連結子会社となった。2023年1月には「SBI新生銀行」に社名を変更する予定だ。

新生銀行は、SBIグループとのシナジー効果などにより、連結純利益を2025年3月期に700億円と、2022年3月期比約3.5倍に拡大させるという。

収益拡大を急ぐのは、3年間で公的資金返済の道筋を示すためでもある。新生銀行における公的資金要返済額3494億円を前提とした場合、必要となる株価は7448円とされ、2022年6月28日時点の株価2073円からみても、はるかに高い水準にある。2022年6月には、三井住友FGと包括的資本業務提携を打ち出すなど、デジタル時代の金融業界を牽引する北尾吉孝SBIHD社長でも、斜陽産業となった既存銀行の業績を3.5倍にするのならともかく、株価を3.5倍以上にするのは、至難の業だ。

このため、新生銀行を非上場化して、市場価格ではない「事業価値」を基にした株価算定により、公的資金を返済する方式も有力な選択肢とされている。

とはいえ、現在の株価では返済出来ない公的資金を、非上場化した後に、時価に関係なく返す手法には違和感もある。また、その場合でも、「事業価値」の核となる新たなビジネスモデルの確立と巨額の返済原資が必要であることに変わりはない。

公的資金返済には、秘策も奇策もなく、「ウルトラCが出てきて急に返せるようにはならない」(新生銀行の川島克哉社長)(日本経済新聞2022年3月31日)新生銀社長、公的資金返済「ウルトラCない」:日本経済新聞(nikkei.com)のだ。