定年後に仕事の人間関係は切れてしまうが…

リタイアすると、たいていの場合、仕事を通してつき合ってきた人たちとの縁は切れます。仕事上の人間関係なんて、そんなものです。それで一気に寂しくなるかもしれませんが、そう気に病むこともないでしょう。なぜなら60歳くらいから不思議と、学生時代の友だちとのつき合いが復活するからです。

仕事や子育てなどで肉体的にも精神的にも忙しかった時代を過ぎ、ほっとひと息ついたとき、何だかとても会いたくなるのです。無邪気にじゃれ合ったり、熱く語り合ったり、力を合わせて何かを成し遂げたり……自分たちがまだ何者でもなく、互いの間に何の利害関係もなかった青少年のころの友だちって、社会人になってからはなかなか得難い存在ですからね。

たとえ何十年も会っていなくとも、同窓会やクラス会の案内が舞い込むと、「久しぶりに行ってみようかな」という気にもなるでしょう。うちの親などは70歳、80歳を超えてからも、「小学校の友だちに会うんだ」と、楽しそうに出かけていました。

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「年をとったら孤独になる」と思い過ぎないほうがいい

あるいは仲の良かったグループで、誰からともなく「会おうか」と声をかけ合って再会が実現するケースもあります。最近なら、Facebookで見つけて連絡してくれる友だちもいるかもしれません。

みんなに会うと、たちまち昔に返ります。卒業して50年も経っているのに、「えー、変わらないねぇ」などと言い合って。現実問題、変わらないなんてありえないのですが、顔を合わせると1分と経たないうちに、少年少女時代の顔に見えてくるのです。

また私の場合、中学校のころの先生と、いまも手紙のやりとりをしたり、電話で話したりしています。近況報告がてらの他愛ないおしゃべりですが、師弟関係と言いますか、先生とずっとつながっている感じはとても良いものです。

といったことを考えますと、年をとって孤独になるんじゃないかと、あまり思い過ぎないほうがいい。子どもが巣立ったり、連れ合いを亡くしたり、家庭を持たないままだったり、いろいろな事情はあるでしょうけど、たまに旧交を温めるだけのつき合いでも、心は癒されます。