精肉店で販売する「ロース」にはヒレも含まれる
長らく焼肉店は「カルビ」「ロース」など、客にとってわかりやすい名称をつけてきた。そもそも「カルビ」(韓国語由来で「あばら」の意味)は原典に忠実で、11分類だと「バラ」でいい。「ロース」は一般的な認識としてはリブロースとサーロインになるが、精肉店などで複数部位を混合して販売する場合には肩ロース、リブロース、サーロイン、ヒレを含めてもいいことになっている。
確かに肩ロースからリブロース、サーロインはひと続きの部位なので「ロース」と称していいに違いない。ヒレが含まれるようになった経緯は不明だが、ロース芯もヒレもやわらかい部位ではある。どことなく食感が近いから「ロース」にまとめてもいいことになったのか……。
精肉店でさえそうなのだから、焼肉店が長らく「似た食感・味わいの部位」をひとまとめにしてくくってきたのも無理はない。
焼肉店は、客がイメージする肉質に近い部位を店が選んで名前をつけてきた。店によってそれぞれ味に特徴があるし、特にカルビの「上」や「特」などは店がふさわしいと思う部位を選定してきた。
消費者庁は「不当表示」をする業者に改善を要請
先のニュースをもう少し詳細に伝えていたのが、日本経済新聞だ。
焼き肉店で牛肉の「もも肉」や「ランプ」を「ロース」と表示するのは景品表示法違反(優良誤認)にあたるとして、消費者庁は7日、全国焼肉協会(東京)に対し、不適切な表示をする業者に改善を求めるよう要請した。外食チェーンなどでつくる日本フードサービス協会(同)にも改善を要請する。
消費者庁は今年2月ごろ、ある業者がロース部位でない肉をロースとして販売しているとの情報を得て調査を開始。実際に「ランプ」「そともも」の部位を「和牛ロース」として販売していた焼き肉店を確認した。「肩ロース」の価格は一般的に「もも肉」より3割程度高い。
同庁は「焼き肉店の正肉はロースとカルビくらいしか表示がない。長年業界全体で部位と違う表示をしていた可能性がある」とみている。(2010年10月7日付日本経済新聞)
「焼肉店の正肉はロースとカルビくらいしか表示がない」とは、いったいいつの時代の話をしているのかと首をひねりたくもなるが、仮にこのコメントが消費者庁のニュアンスを正確に表しているのだとすれば時代錯誤も甚だしい。
本当は「焼肉店の正肉として象徴的なカルビとロースについて、あまりにも自由に他部位の名前をつけすぎている」くらいの話が、記者のバイアスと紙幅の都合で雑なまとめになったのだろうか。いずれにしても、この件についての消費者庁は少し軽率だった。