心疾患や認知症など、さまざまな病気を予防する効果が期待できる栄養素がある。サイエンスライターの佐藤成美さんは「それはポリフェノールだ。ワインやコーヒーに含まれており、1990年代から急速に研究が進んでいる。日本食でもよく食べる大豆にも含まれていて、特にみそ汁が健康に貢献しているのではないかと注目されている」という――。(第1回/全3回)
※本稿は、佐藤成美『本当に役立つ栄養学 肥満、病気、老化予防のカギとなる食べものの科学』(ブルーバックス)の一部を再編集したものです。
ここ30年で健康機能が注目されるようになったポリフェノール
ワインやコーヒーをはじめ、多くの食品に「ポリフェノール」が含まれていて、「体に良い」とよく聞きます。とはいえ、ポリフェノールとはいったいどんな物質で、どんな効果があるのでしょうか。
ポリフェノールは、よく知られている赤ワインや緑茶のほかに、コーヒーにも含まれています。かつては、コーヒーの飲みすぎは体に悪いとか、がんになるといわれていたのに、近ごろは「コーヒーは体に良い」というのだから、時代が変われば考え方も変わるものです。
これまで数々の食べものに含まれているポリフェノールが体に良いと話題になってきました。ココア、ウーロン茶などの飲料に、チョコレートやゴマなどの食品。それにタマネギやブロッコリーなどの野菜、リンゴやブルーベリーなどの果物。挙げるときりがありません。
挙げた食品の共通点として「植物もしくは植物が材料である」ということがあります。多くの植物はさまざまな種類のポリフェノールを合成します。科学者にとってその生理機能は興味深く、古くから研究されてきました。しかし、食品の成分としてはあまり好ましいものではありませんでした。
たとえば、緑茶の渋みはポリフェノールによるものですが渋すぎる緑茶は避けられますし、リンゴのポリフェノールは、果肉を茶色に変化させます。それが、1990年代に赤ワインに含まれるポリフェノールの動脈硬化予防の可能性が知られると、以降さまざまな食品のポリフェノールの健康機能が注目されるようになりました。それとともに、健康に良い成分として広く認識されるようになったのです。