注目されるきっかけとなった「フレンチパラドックス」

そもそもポリフェノールとは何なのでしょうか。図表1に示したような構造的な意味から「ポリフェノール」と呼ばれます。

緑茶に含まれるカテキン、ブルーベリーのアントシアニン、蕎麦のルチン、大豆のイソフラボンはみな構造からポリフェノールに分類され、その種類は多く、すでに1万種以上が見つかっています。動けない植物にとって、ポリフェノールは紫外線や害虫などの外敵から身を守る大事な物質であると考えられています。

タンニンの渋味は虫や動物に食べられないようにするため、アントシアニンは紫外線をブロックするためと、植物によって種類や機能はさまざまです。その機能がヒトにとって有益ではないかと考えられるようになってきました。

これまで漢方薬や民間療法などで利用してきた植物の有効成分としてのポリフェノールが、研究されるようになったのです。ポリフェノールが注目されるきっかけになったのは、「フレンチパラドックス」です。フランス人は喫煙率が高く、肉やバターなど動物性脂肪もたくさん食べるのにもかかわらず、心疾患による死亡率が低いというもの。動物性脂肪の摂取量と心疾患の死亡率の高さには相関があるのですが、フランス人はこの相関から外れていることが知られていました(図表2)。

赤ワインを飲むことで動脈硬化を予防できる

フランスのセルジュ・ルノーらは調査から、フランス人の心疾患による死亡率の低さは赤ワインの消費量と関係があることをつきとめました。動物性脂肪をたくさん摂取しても、赤ワインを飲んでいれば心疾患のリスクは高くならないと1991年に発表し、赤ワインブームが起きたのです。

1994年に赤ワイン摂取によりLDLの酸化が遅延したとする報告をきっかけに、赤ワインの動脈硬化に対する作用が次々と報告されました。動脈硬化についてはLDLがその要因とされますが、そのままでは動脈硬化の原因にはなりません。酸化され変性すると粥状じゅくじょうのかたまりになり、血管の内皮下に蓄積して、動脈硬化につながるのです。

一連の研究で、赤ワインのポリフェノールにはLDLの酸化を抑える効果があり、動脈硬化を予防できることが示されたのでした。動物性脂肪をたくさん食べるフランス人の体内には、おそらくたくさんのLDLがあるはずですが、赤ワインのおかげで酸化せずに済んでいると考えられています。