その場で思いを打ち明けると、女性社員から「向いてそうやね」と背中を押され、松原は俄然やる気が出た。その後、トントン拍子で面接が進む。その都度「あの社員さんみたいに働きたいです!」と熱意を伝え、2015年の4月、松原は同社で働き始めた。

筆者撮影
軽い気持ちで会社説明会に参加したのが入社のきっかけだった。

企画が集まらないなら、自分が考えればいい

神姫バスに入社しておよそ3年間、不動産事業に携わった。デスクワークが中心の部署で、賃貸マンションやオフィスビルの稼働や管理に向き合う日々。当時新設する飲食ビルのオープン記念のPRなども担当した。

2018年、念願の事業戦略部に配属された。けれど、最初は企画を考えるというより、社内で新規事業を作る制度を考えたり、新規事業のサポートをするのが仕事だった。

「もともと神姫バスには『社内ベンチャー制度』というのがあるんです。社員がアイデアを出しやすくなるように研修を行ったり、企画コンペを開催したりしていましたね」

松原は社員からアイデアが生まれるように研修を行いながら、社内での新規事業の実現の難しさを感じていた。既存の制度では社員が企画を出したとしても、綿密な事業計画が必要でハードルが高いと感じた。

そこで、社員からの応募を募るために、「企画が通ったら賞金が出ます」と社内に告知。けれど反応はイマイチだった。次に、「提案事業で責任者になれます」と制度を変えたが、それでも結果は同じだった。

「最初は、なんでみんな企画を出さんのやろって思いました。社員が求めているのはお金でもなく、地位でもない。そもそも若手社員の中で新規事業をやりたいという積極的な人は少ないのかなと感じました。若手社員による新規事業の事例もないから、わからないんですよね。『だったらもう、私がアイデアを出せばいっか!』って思ったんです」

使われなくなった路線バスを活用したら…

企画が生まれるのを待つより、自分で企画を出そうと考えた松原。当初は外国人を誘致するインバウンドの事業を企画していた。しかし、2020年春先から新型コロナウイルスが猛威を奮い始めたことで、そのアイデアは頓挫する。

それなら会社で使えるものはないかと考えたとき、姫路の町を走る自社の路線バスが目についた。

「そうだ、使われなくなった路線バスを活用したら面白いかもしれない」

そこから海外のユニークなバスの活用例をネットで検索。すると、ある記事を見つける。サウナの本場フィンランドで、「サウナバス」が道路を走っているという内容だった。

フィンランドはサウナの発祥地。現在も湖畔沿いや街中には、ストーブで熱した石に水をかけて蒸気を発生させる「ロウリュ」を堪能できる温浴施設が並ぶ。