部下に激高しから揚げを投げつけた部長

映像制作会社の企画部での出来事です。この部署では定期的に飲み会を開催しているのですが、部長だけはその飲み会に誘われていなかったようです。ある日、飲み会の話を偶然聞いたD部長は「俺もたまには呼んでくれよ」と飲み会を企画しているE君に頼んだそうです。

メンバーの中には反対した者もいたそうですが、「さすがに断りづらい」ということでD部長も誘ったそうです。飲み会はいつも通り盛り上がっていたのですが、突然、D部長が立ち上がり、E君の顔めがけて“から揚げ”を投げつけてしまったそうです。

静まり返った居酒屋の個室で部長はE君に不満をぶつけました。その理由は一番の上司であるにもかかわらず

1.乾杯の挨拶をさせなかった
2.ほぼ無視をされている
3.お酌をする者すらいない

とのこと。部長が退席すると、「パワハラじゃないのか?」「明日から職場でも無視しよう」といった声が上がったそうです。

たしかに、部長の行動はパワハラといわれても仕方ありません。しかし、無視や飲み会メンバーから外すなどの一連の行為も“逆ハラ”といわれる可能性のある行為です。このことから、両者に対する注意勧告が行われるにとどまり、いったん決着しました。ただし、その後、D部長のマネジメント能力が問われることとなったのはいうまでもありません。

咎め方によっては自身がハラスメント加害者になりうる

「みんなに謝罪してください」

ある精密機器メンテナンス事業を行う会社の朝礼での出来事です。

専務に謝罪を迫られているのは営業課長のFさん。話によると、このFさん、女性の派遣スタッフに対し日頃から横柄な態度を取り、また、セクハラと思われる言動をしていたそうです。Fさんは女性スタッフに直接謝罪をし、「今後、改めてくれるのなら」ということでその場は収まりました。ところが、この報告を受けた専務は怒りが収まらず、「全社員に対して謝罪をするべきだ」となったそうです。

針のむしろに座る思いをしたFさんはその後体調を崩し、退職したそうです。この話はこれで終わりではありません。ほどなくしてFさんから会社に対して「パワハラを受けて退職せざるを得なくなった」として、あっせんが申し立てられたのです。“セクハラ”は確かに問題行為ですが、それを注意や処分することも適切に行わなければなりません。

“悪を成敗する”といったようなスタンスで指導をしていると、それ自体“行き過ぎた指導”となり、パワハラとなってしまいます。セクハラやパワハラを取り締まるはずの第三者がパワハラの加害者になってしまうこともあるのです。